就職の際、企業を選ぶ基準として福利厚生の充実度を重視する人もいるのではないでしょうか。
福利厚生には様々な種類があります。その中でも今まで多くの企業が採用してきた家族手当という福利厚生は聞いたことある人も多いでしょう。そこで本記事では家族手当の概要について、相場や支給要件、扶養手当との違いも含めてご紹介します!
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家族手当とは?
家族手当とは、企業が配偶者や子供など家族を持つ従業員に対して賃金とは別に手当を支給する福利厚生のひとつです。法定福利(法律で義務付けられた福利厚生)ではないため企業側に支給する義務はありません。よって家族手当は労働基準法に基づいて支払われる基本給とは違い、企業独自の就業規則に沿って支給されます。
家族手当は従業員の家計の負担を軽減し、働きやすい環境を整備することを目的としており、配偶者の有無や子供の人数に応じて支給する金額を決定している企業が多い傾向にあります。
家族手当と扶養手当の違い
家族手当と類似した手当に扶養手当があります。扶養の有無に関わらず家族を対象として支給される家族手当に対して扶養手当は「扶養家族」(自身の収入で養っている家族)限定の手当です。よって、支給対象者に一定以上の収入があると対象から外れてしまいます。扶養している子供の年齢も18歳や22歳までと決められていて、その年齢以上になると支給対象から外されてしまいます。
・扶養手当:扶養対象の家族がいれば支給対象となる
※被扶養者に一定以上の収入があると支給されない
家族手当の支給される条件
家族手当の支給条件は企業で独自に定められます。配偶者、子供、両親を対象とした企業もあれば、配偶者、子供のみを対象とした企業もあり、企業によって要件は様々です。以下では多くの企業が採用している支給条件について紹介します。
配偶者や子供の数
配偶者の有無や子供の人数によって支給金額を決定する手当です。子供が2人いる家庭の場合、配偶者1人、子供2人の計3人が支給対象となります。令和3年度の中小企業の賃金事情によると、配偶者は1万円程度、子供は5,000円程度が支給額の平均になります。また、子供に対する支給額は第一子が最も高い傾向にあります。
会社規模(従業員数) | 配偶者 | 第一子 | 第二子 | 第三子 |
100~299人 | ¥11,378 | ¥5,617 | ¥5,491 | ¥5,730 |
50~99人 | ¥10,770 | ¥5,889 | ¥5,310 | ¥5,189 |
10~49人 | ¥10,010 | ¥5,829 | ¥5,535 | ¥5,406 |
平均 | ¥10,498 | ¥5,802 | ¥5,461 | ¥5,415 |
引用元:)東京都産業労働局「中小企業の賃金事情(令和3年度版)」
同居の有無
同居の有無を考慮して同居している家族のみを支給対象とする手当です。例えば、子供が1人暮らしをしている場合は減額になりますが、両親が同居している場合などは支給対象が増える計算になります。
扶養家族の有無
扶養家族がいるかどうかが支給の条件になる場合、同居していなくても扶養家族がいれば支給対象です。よって、同居していても配偶者が一定以上の収入があれば、扶養家族と認められず、配偶者は対象外になる可能性があります。この場合の家族手当は条件が扶養手当に似ています。
年齢
支給対象の子供や両親に年齢の制限がある場合です。子供は18歳以下もしくは22歳以下、両親は満60歳以上としている企業が多い傾向にあります。
家族の収入
家族手当支給対象者に収入の上限を設定した場合です。103万、130万、150万の金額をボーダーにして手当を制限するのが一般的で、これを超えた収入の家族は対象となりません。特に103万円を境界にしている企業が多く、令和3年度では45.4%の企業が取り入れています。
家族手当の相場は?
家族手当の相場は配偶者が月額10,000円~15,000円、子供は1人につき月額3,000円~5,000円程度です。ただし、これはあくまで平均の支給額です。令和3年度の中小企業の賃金事情を見ると、企業の最高支給額と最低額には大きな差があります。支給額は企業によってかなり異なるので、自社の支給額はいくらなのかは就業規則で確認しましょう。
一律支給 | 家族別支給(配偶者) | 家族別支給(第一子) | 家族別支給(第二子) | 家族別支給(第三子) | |
最高 | ¥50,000 | ¥69,000 | ¥30,000 | ¥25,000 | ¥20,000 |
平均 | ¥11,769 | ¥10,498 | ¥5,802 | ¥5,461 | ¥5,415 |
最低 | ¥2,000 | ¥800 | ¥500 | ¥500 | ¥400 |
引用元:)東京都産業労働局「中小企業の賃金事情(令和3年度版)」
家族手当のメリット
家族手当は業務の業績に関係なく、従業員の家族構成で受給できる手当のため、企業は支給することで毎月変動なく従業員満足度を高く保つことが可能になります。また、家族手当の目的は出費の多い家族持ちの従業員の経済的支援です。家族手当の支給により、従業員の経済的負担が軽減することで業務に集中でき、高い生産性が期待できます。
家族手当のデメリット
単身者やその他支給対象外の従業員に不満を感じさせてしまう可能性がデメリットとして挙げられます。働き方の多様化や女性の社会進出によって、共働き世帯や単身者など支給対象外の従業員が増えてきました。一定数の従業員に対して、労働時間や能力に関係なく支給される家族手当は、支給対象外の能力のある従業員のモチベーションを下げてしまう可能性があります。
家族手当を廃止する企業が増加している
近年、家族手当の金額縮小、廃止等の見直しを行う企業が増えてきています。「東京都産業労働局 中小企業の賃金・退職金事情」によると、家族手当を採用している企業は昭和57年には83%でしたが、平成26年になると58%にまで減少しています。この背景にはライフスタイルの多様化や配偶者特別控除の改正、成果主義の浸透が挙げられます。これらの要因について詳しく見てみましょう。
ライフスタイルの多様化
そもそも家族手当は一家の大黒柱が家計を支えるシングルインカム主流の時代に適合した福利厚生です。かつては男性が働き、女性は専業主婦になる世帯が多くありました。
しかし、時代が変わりライフスタイルが多様化した現代では女性の社会進出が増加し共働きが主流になっています。つまり、今は1つの世帯に2つの収入減があるダブルインカム世代なのです。このライフスタイルの変化により家族手当の必然性がなくなったことが見直しの要因の1つになります。
配偶者特別控除の改正
配偶者特別控除の改正も見直しを促す要因です。配偶者控除とは所得税法が定める所得控除の1つであり本人の所得や配偶者の収入を考慮し所得から減額される制度をいいます。
この制度はかねてから労働意欲低下の可能性が指摘されており、これを改善させるため配偶者特別控除改正で年収上限が引き上げられました。これにより、配偶者特別控除を家族手当の支給対象としていた企業にとって対象者が増えることになります。その増加分の費用を削減する目的として改正を機に多くの企業が家族手当を見直しました。
成果主義の浸透
3つめの要因として成果主義が浸透してきていることが考えられます。デメリットの項目でも述べましたが、家族手当は従業員の仕事での成果とは無関係に支給されるので従業員間の不公平感を生む要因になりかねません。
成果を重視する成果主義の考え方が浸透した現在は経営者にも家族手当を不公平と考える人が多くなり、家族手当を廃止する企業の増加に繋がっています。
家族手当に代行する新たな手当
大手企業を中心に家族手当に代わる新たな手当や制度を取り入れる企業が増えています。以下では新しい手当や制度の例を紹介します。
基礎能力手当
基礎能力手当とは全従業員を対象とした個人の能力や実力を公平に評価する手当です。この手当では家族手当にあった不公平感をなくし労働意欲の向上が期待できます。基礎能力手当の具体例としては
「PC・IT能力手当」「英語力手当」があげられます。
両立支援制度
少子高齢化の促進や共働き世帯の増加によって従業員の働き方に対するニーズは年々変化しています。今後重要視される働き方は仕事と家事、育児、介護の両立でしょう。仕事との両立が困難で従業員に離職されては企業にとってもデメリットです。従業員の仕事と生活の両立を支援した労働環境を整備する企業が増えています。
まとめ
家族手当は家族を持つ従業員に対して支給される福利厚生であり、その支給要件は企業によって独自に決められます。かつては採用している企業も多く主要な福利厚生の1つだったといえるでしょう。しかし、ライフスタイルの多様化や仕事に対する能力評価の浸透といった環境変化に伴い、制度を見直す動きが広がっています。
時代の変化に合わせて古い時代に適合した制度を廃止することも重要です。しかし、今後の新たな働き方を見据えて先の時代に合った制度を積極的に取り入れる姿勢が最も重要になるのではないでしょうか。
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