産前産後休暇とは?取得期間や手当、必要手続きを徹底解説!

産前産後休暇とは?取得期間や手当、必要手続きを徹底解説!

女性の社会進出が推進される現在、女性にとって働くうえで重要なポイントとなるのが妊娠・出産に関するサポートです。出産や育児による長期休暇を経ても遜色なく働ける職場は、出産を望む女性にとって働きやすい職場といえるでしょう。

女性にとって働きやすい環境を作れば、優秀な人材の離職防止や確保につながります。本記事では妊娠した女性従業員のための産前産後休暇について仕組みや手当の有無、企業が取るべき手続きの手順をご紹介します。

産前産後休暇とは

産前産後休暇とは一般的に「産休」とよばれる、妊娠・出産時に取得できる休暇です。産休には産前休暇と産後休暇の2種類があり、合わせて産前産後休暇(産休)といいます。産前産後休暇は労働基準法第65条で定められた女性従業員の母体と新生児の保護のための休暇で、雇用形態に関係なく全ての女性従業員が対象です。

男女雇用機会均等法第9条により、企業は女性従業員が産前産後休暇を取得することを拒否できません。さらに、これを理由に不利益な扱いをすることも禁止されています。

「産前休暇」とは

産前休暇とは産休のうち出産前に取得できる休暇を指します。原則出産予定日の6週間(42日間)前から取得可能です。また、双子以上の多胎妊娠の場合は14週間(98日間)前から取得できます。出産日が予定日より早まった場合は産前休暇は短くなりますが、予定日より遅れた場合は6週間を過ぎても産前休暇扱いとなります。

「産後休暇」とは

産後休暇とは産休のうち出産後に取得できる休暇です。従業員が申請し、任意で取得できる産前休暇に対して、産後休暇は企業が必ず従業員に取得させなければならない休暇です。

従業員は産後8週間は就業が禁止されます。しかし、従業員当人の希望と医師の許可があれば産後6週間で復帰可能です。産後休暇は期間が出産後8週間なので予定日より出産が遅れても産前休暇と違い、短くなることはありません。

産前休暇と産後休暇の違いは以下のとおりです。

産前休暇産後休暇
取得対象女性従業員女性従業員
取得義務任意義務
取得可能期間出産予定日の6週間前から(多胎妊娠の場合は14週間前から)出産日翌日から8週間

 

産前産後休暇と育児休業の違い

一般的に産前産後休暇とセットで認識されている休暇に育児休業というものがあります。同じ休暇制度だと思っている人もいますが、全く違う制度です。育児休業とは育児介護休業法によって定められた従業員が育児に専念することを目的とした休暇です。育児休業は原則、1歳未満の子どもを養育する男女従業員が取得対象とされています。しかし、子どもが保育所に入れない等の理由があれば、子どもが満2歳になるまで休暇期間の延長が可能です。産前産後休暇と育児休業の違いは以下のとおりです。

産前産後休暇育児休暇
対象出産を予定している女性従業員1歳未満の子供を持つ男女従業員
期間産前休暇:出産予定日の6週間前から
産後休暇:出産日から8週間
配偶者の出産日もしくは産後休暇の翌日から子どもが1歳の誕生日を迎えるまで
(育児の負担が大きいと認められる理由がある場合は子どもが2歳になるまで延長が可能)
申請時期産前休暇:任意で取得する休暇により申請時期は特に決められていない
(出産予定日の6週間前までに申請することが無難)
出産予定日の1か月前まで
出産予定日の1か月前までなし労使協定を締結すれば以下の労働者を対象外にすることが可能
・雇用期間が1年未満の従業員
・1年以内に雇用関係が終了する従業員
・週の所定労働日数が2日以下の従業員

 

男性の場合は配偶者の出産日から育児休業を申請できます。女性は出産後8週間は産後休暇扱いとなるので、産後休暇期間が終了する翌日から育児休業を取得できます。

産前産後休暇中の給与・手当

産前産後休暇は他の休暇制度に比べて長期的です。その間の給与や手当はあるのでしょうか。

産前産後休暇中の給与保証

労働基準法では産休・育休期間に企業が従業員に給与を支給する義務はありません。ただし、給与保証の有無に関してはあらかじめ就業規則に定めておくことが必要です。現在、給与保証を実施している企業は少ない傾向にあります。

出産手当金とは

出産手当金とは産休期間中に健康保険から支給される給付金のことです。出産による生活費用や労働できない等の負担を援助するための制度で、申請すれば受給できます。ただし、受給者には以下のような条件があるので注意が必要です。

受給条件・勤務先の健康保険に加入していること(国民健康保険は適用外)
・産前産後休暇中に給与の支払いがないこと

出産手当金は支給開始前の継続した12か月の各標準報酬月額を平均した額を30日で割り、その額の2/3の金額が1日単位で支給されます。計算式は以下のとおりです。

出産手当金=支給開始前の継続した12か月の各標準報酬月額の平均額/30日×2/3×産前産後休暇の日数

例えば、月額27万円が平均給与の従業員が90日間産前産後休暇で休んだ場合の出産手当金は、54万円になります。

①27万円/30日=9,000円(1日の平均報酬額)
②9,000円×2/3=6,000円(1日の出産手当金支給額)
③6,000円×90日=54万円(産前産後休暇中の出産手当金総支給額)

出産手当金の支給対象期間は出産日を含む、出産日42日前(多胎妊娠は98日前)から出産日翌日以降56日までです。この期間であれば全日支給されるわけではなく、実際の休暇日数が支給対象です。出産予定日より出産が遅れた場合は42日を過ぎた日数も支給対象となります。

出産育児一時金とは

出産育児一時金とは分娩費用の補助を目的として健康保険から支給される給付金のことです。子ども1人につき42万円支給されます。(産科医療補償制度に加入していない医療機関の場合は40.8万円)つまり、双子では84万円、三つ子では126万円支給されるということです。ただし、受給するには以下の条件があるので注意が必要です。

受給条件・健康保険または国民健康保険に加入していること
・妊娠4か月(85日)以後に出産をしたこと

万が一、死産や流産となった場合でも妊娠4ヶ月(85日)以後であれば支給対象となります。(ただし、妊娠22週未満の場合は産科医療補償制度に加入した医療機関であっても40.8万円)また、出産日の翌日から2年以内であれば申請ができるので、出産前に申請をし忘れても産後に申請可能です。

出産育児一時金の支給方法は直接支払制度と受取代理制度の2種類があります。

直接支払制度とは出産育児一時金を加入している健康保険組合から直接医療機関に支払う制度です。一方、受取代理制度とは本来、被保険者が受け取るべき出産育児一時金を医療機関が代理で受け取る制度のことです。どちらの制度を利用できるかは医療機関によりますが、医療機関が申請を代理する直接支払制度が一般的です。

出産手当金と出産育児一時金の違い

先述した出産手当金と出産育児一時金はどちらも出産時期に申請及び給付される制度なので内容が混同されがちです。2つの給付金の違いを整理しましょう。

出産手当金出産育児一時金
支給目的休暇期間の生活費用の補助分娩費用や検診費用などの出産にかかる費用の補助
支給条件・健康保険の被保険者(国民健康保険は対象外)
・休暇中に給与が支給されないこと
・健康保険または国民健康保険の被保険者
・妊娠4ヶ月(85日)以後に出産したこと(流産・早産・死産も含む)
支給金額平均月収を30日で割った金額の2/3×休暇日数1児につき42万円(産科医療補償制度に加入していない医療機関の場合は40.8万円)
支給対象期間出産日を含む出産日前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産日以後56日まで期間はない
申請手続き①出産手当金支給申請書を入手
②担当医、勤務先に必要事項を記入してもらう
③産後56日経過後、支給申請書を勤務先の健康保険窓口や加入している協会けんぽに提出
直接支払制度の場合
①医療機関に直接支払制度を利用してい旨を伝え、直接支払制度合意書を医療機関に提出
②医療機関に健康保険証を提示する
③出産育児一時金が分娩費用、入院費用から差し引かれて給付される
(分娩・入院費用が出産育児一時金より高かった場合は超過分を医療機関に支払う。安かった場合は差額分を請求するため、明細書に記入し、必要書類とともに健康保険窓口に提出する。)
受取代理制度の場合
①支給申請書の自己記入欄と医療機関記入欄に必要事項を記入し、健康保険窓口等に提出
支給時期申請から1~2か月後申請から1~2か月後
申請期限休業していた日ごとに、その翌日から2年以内出産日の翌日から2年以内
窓口健康保険組合、協会けんぽ健康保険組合、協会けんぽ
退職した従業員への対応出産した従業員が退職する場合、退職する前日に現に出産手当金を受給しているか、受給できる状態(出産日を含む出産日前42日が健康保険加入期間かつ退職日は休業している)であれば、退職後も期間の範囲内で支給を受けられる。出産した従業員が退職する場合、在職中に被保険者期間が継続して1年以上あり、出産日が退職日から6か月以内であれば出産育児一時金の支給対象となる。

 

産前産後休暇中の社会保険料

産前産後休暇を取得した従業員の社会保険料は「産前産後休業取得者申請書」の提出により免除されます。さらに従業員だけでなく、当該従業員の産前産後休暇期間中の企業負担分の社会保険料も免除されます。(産前産後休業保険料免除制度)

免除期間は休暇開始月から終了予定日の翌日の前月までとなります。休暇終了日が月末日の場合は休暇終了月が免除期間終了月です。

産前産後休暇の導入手続き

従業員から産前産後休暇の申請を受けてから実施、復帰に至るまで企業はさまざまな手続きを行う必要があります。具体的には以下の3つの段階で各手続きや書類提出が必要となります。

1.従業員から産前産後休暇の申請を受けた時
2.従業員が産前産後休暇を取得した時
3.出産報告を受けた時

1‐1 「産前産後休暇願届」を受理する

従業員から妊娠の報告を受け、産前産後休暇の取得を当該従業員が希望している場合、企業で使用している「産前産後休暇願届」があれば従業員に記入してもらい、受理します。この段階で企業は従業員に以下の項目について確認または依頼をしましょう。

確認項目・出産予定日の報告
・産前最終出社予定日の確認
・職務復帰の有無(復帰する場合は復帰予定日の確認)
・産前産後休暇消化後の育児休業の取得希望の確認
・従業員本人に用意してもらう必要書類の確認及び容易の依頼(産前産後休業取得者申出書・出産手当金申請書・新生児の戸籍謄本など)
・出産の報告
・休暇期間中の通勤手当の返却
・出産育児一時金など従業員本人が申請する制度の確認制度の確認及び説明
・休暇中の連絡先提示

1‐2 住民税の徴収方法の確認

従業員の産前産後休暇中は社会保険料の支払いが免除されますが、住民税は免除されないので休暇前に徴収方法を確認しましょう。徴収方法は3種類あります。

徴収方法・休暇開始前の一括徴収
・休暇中は企業が立て替え、復職後に徴収
・普通徴収に切り替える

普通徴収とは住民税を納税者自ら納付する方法です。企業で働いている従業員は基本的に毎月の給与から住民税を差し引く特別徴収という方法で納税しています。

産前産後休暇中に給与の支払いがない企業では特別徴収での納税ができないため、休暇期間中のみ普通徴収に切り替えることが可能です。就業規則で方法が指定されている場合はその方法に従い、指定されていない場合は従業員と話し合って決めましょう。

また、休暇中の納付が困難な場合は1年間徴収が猶予される猶予制度を利用することも可能です。ただし、従業員本人の申請と復帰後に延滞金の支払いが必要です。

2‐1 産前産後休業取得者申出書を提出する

従業員が産前産後休暇に入ったら、企業は産前産後休業取得者申出書を日本年金機構に提出します。そうすることで健康保険資格、年金受給期間はそのままで被保険者である従業員及び企業負担分の社会保険料が免除されます。

申請時期:休暇中(産前または産後)
申請方法:企業が日本年金機構に産前産後休業取得者申出書を提出する(郵送または電子申請)

産前産後休暇後に育児休業を取得する場合は、「育児休業取得者申出書」を産前産後休暇の時と同様に申請すれば育児休業中も免除されます。

3‐1 出産手当金の申請をする

従業員が健康保険の被保険者且つ、企業が休暇中に給与の支払いを行っていない場合、従業員から出産報告を受けたら出産手当金の申請をします。出産手当金は健康保険からの給付手続きのため、原則被保険者である従業員が申請しますが、企業側が代理で行うことも可能です。どちらが申請するかは従業員と話し合い、企業が負担する場合は従業員から必要書類を提出してもらいましょう。

申請時期:産前産後休暇中(産後に行うことが一般的)
提出書類:健康保険出産手当金支給申請書・療養担当者意見書・事業主証明書
提出先:全国健康保険協会または健康保険組合

3‐2 扶養追加の申請

健康保険に加入している従業員は、出産後に出生届を提出して子どもの戸籍を取得し、企業を通して扶養追加の申請を行います。従業員が記入した「健康保険被扶養者異動届」を企業が全国健康保険協会または健康保険組合に提出することで申請できます。ただし、健康保険組合では保険証の発行に2〜3週間かかってしまうため、新生児の1か月検診に間に合わせるためには産後5日以内に申請することが好ましいです。

申請時期:産後5日以内
提出書類:健康保険被扶養者異動届(続柄が確認できる戸籍謄本もしくは住民票を添付)
提出先:全国健康保険協会・健康保険組合

3‐3 養育期間の標準報酬月額特例の申請

従業員が出産後、育児のために時短勤務をするなどして標準報酬月額が下がった場合、標準報酬月額をもとに受給額を算出している年金の将来受給額が下がってしまいます。

そこで年金額が減らないように標準報酬月額特例を申請すれば、産前産後休暇以前の標準報酬月額を「みなし報酬月額」として年金の算出に充てることが可能です。従業員が作成した厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書を企業が管轄の年金事務所に提出することで申請できます。

申請時期:産前産後休暇、育児休業終了時・産後
提出書類:厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書
提出先:管轄の年金事務所

産前産後休暇を取得するには、申請時、休暇中、出産後にさまざまな手続きが必要です。企業が申請する手続きと従業員が申請する手続きがあるので混同しないように各種手続きの内容を正しく理解することが重要です。

また、企業が申請をするが、必要書類の作成は従業員が行うといった複雑な手続きもあるので注意しましょう。産前産後休暇が終わり、そのまま育児休業を取得する場合はまた育児休業に関する新たな手続きが必要です。

産前産後休暇で企業側がとるべき対応

企業は産前産後休暇に関する必要な手続きを行うだけでなく、日ごろから女性従業員が産前産後休暇を申請しやすいまたは妊娠中の安心して働ける環境の整備に注力しなければいけません。

妊娠・出産を理由に不利益な取り扱いをしない

労働基準法第19条により産前産後休暇中及びその後30日間の解雇は禁止されています。解雇以外にも産前産後休暇取得を理由に減給や退職の強要、不当な人事評価は不利益な取り扱いに該当します。

また、企業は男女雇用機会均等法第12条により妊娠中の従業員に保健指導や健康診査を受けるために時間を与えなければいけません。受診のための時間を確保しなければならない回数は以下のとおりです。

妊娠週数確保しなければいけない受診回数
0~23週4週間に1回
2週間に1回2週間に1回
36~出産1週間に1回
確保すべき時間・検査に要する時間
・保健指導に要する時間
・医療機関への往復移動時間

確保すべき時間は以上の項目を参考にして基に決めましょう。
不利益な取り扱いをしないこと、健康診査に必要な時間を確保する以外にも、通勤時間の緩和や時短勤務、産前産後休暇制度の従業員への周知などを実施し、企業全体で妊娠・出産に関する理解を高めていくことが重要です。

復職後のサポートを充実させる

妊娠中に従業員が働きやすい環境づくりと同様に、出産後の従業員がスムーズに職場復帰できる環境を整備することも重要です。育児介護休業法により、従業員が復職する際に原職、つまり産前産後休暇・育児休業を取得する前と同じ職または原職相当位職を原則とすることが定められています。原職相当職とは以下の条件を満たすものです。

条件・復職後の地位が休業前より下がっていないこと
・職務内容が以前と同じこと
・勤務場所が以前と同じこと

従業員がブランクを感じずにスムーズに職場に復帰できるように、場合によっては休暇前に復帰以後の待遇について話し合いをしておくことも大切です。

まとめ

産前産後休暇とは妊娠・出産時に女性が取得できる休暇制度のことです。企業が任意で導入する制度ではなく労働基準法で義務付けられた制度で全ての女性従業員が取得できます。企業側は煩雑な手続きに加え、長期間労働力を失うことになりますが、一方で産前産後休暇に関する手当やサポートを充実させれば優秀な人材の離職防止や新しい人材の確保が期待されます。女性が活躍しやすい職場環境をつくるためには全従業員が休暇制度について理解を深め、休暇だけでなく休暇前後のサポートも充実させることが重要です。

この記事を書いた人

関川 懸介

株式会社uloqo代表取締役

1990年6月29日生まれ。京都府出身。
新卒でアドテクノロジーベンダーに就職。
その後、リクルートグループの人材斡旋部門において、キャリアアドバイザーとして従事。全社MVP計6回受賞、準MVP計2回受賞。2016年4月に、創業者の当時代表取締役と共に株式会社uloqoを設立。
人材紹介事業、メディア運営、HRsolution事業、uloqoに関わる全事業において、1人で立ち上げから収益化まで担う。

株式会社uloqo労務代行サービスの6つの魅力

✓採用から労務、評価まで一気通貫のノウハウを有するコンサルタントによる労務代行で、ビジネス視点を持った提案が可能です。
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