👉この記事のポイント
- 採用基準策定の重要性
採用基準を明確にすることで、ミスマッチの防止と採用精度・効率の向上が実現できます。
- 基準策定の具体的手順
現場のスキル洗い出しからMUST/WANT整理、競合との差別化までを3ステップで体系的に進めることが重要です。
- 基準運用と改善の実践
採用基準は一度作って終わりではなく、効果測定や市場分析を通じて継続的に改善することが必要です。
関連動画:なぜエンジニア採用は失敗するのか?母集団形成から内定までの落とし穴
エンジニア採用における採用基準とは
エンジニア採用を成功させるためには、明確な採用基準を設けることが欠かせません。そこでまずは、採用基準の基本的な構成と考え方について整理しておきましょう。
- なぜ採用基準が必要なのか?
- 採用基準の主な要素
- 技術スキル(ハードスキル)
- ソフトスキル
- 企業文化・働き方の適性
上記の5点に分けて解説していきます。
なぜ採用基準が必要なのか?
採用基準を設けることには、いくつかの重要な目的があります。まず第一に、ミスマッチの防止が挙げられます。企業が求めるスキルや適性を明確にすることで、入社後のギャップを最小限に抑え、早期離職のリスクを軽減することが可能になります。
次に、採用プロセスの効率化という観点でも採用基準は欠かせません。明確な基準があることで、候補者の評価基準が統一され、選考にかかる時間の短縮や、判断のブレを防ぐことにつながります。
さらに、採用基準は応募者へのアピールにも効果を発揮します。企業がどのような人材を求めているかが明確であれば、自分に合っていると感じた候補者からの応募を促しやすくなり、結果としてより適した人材との出会いにつながります。
採用基準の主な要素
エンジニア採用において、以下の3つの視点から基準を設定することが重要です。
| カテゴリ | 主な要素 | 具体例 |
|---|---|---|
| ハードスキル | 必須スキルと歓迎スキルを明確にする | – プログラミング言語: Python, Java, JavaScript – フレームワーク: React, Django, Spring – インフラ・クラウド技術: AWS, GCP, Docker – データベース: MySQL, PostgreSQL, MongoDB – 開発経験: チーム開発経験、アジャイル開発 |
| ソフトスキル | プロジェクトを円滑に進めるために必要な能力 | – コミュニケーション能力: チームと円滑にやり取りできるか – 問題解決能力: エラーや課題を自ら考え、解決に導けるか – 主体性・学習意欲: 新しい技術を自発的に学ぶ姿勢があるか |
| 企業文化の適性 | 企業ごとの文化や働き方にフィットするか | – リモートワーク適性: 自律的に業務を進められるか – チームワークの価値観: 個人と集団どちらを重視するか – 企業の開発スタイルへの適応: 志向が企業のスタイルに合うか |
1.技術スキル(ハードスキル)
必須スキルと歓迎スキルを明確にする
- プログラミング言語(例:Python, Java, JavaScript)
- フレームワーク(例:React, Django, Spring)
- インフラ・クラウド技術(例:AWS, GCP, Docker)
- データベース(例:MySQL, PostgreSQL, MongoDB)
- 開発経験(例:チーム開発経験、アジャイル開発)
2.ソフトスキル
技術力だけでなく、プロジェクトを円滑に進めるためのソフトスキルも重要です。
- コミュニケーション能力:チームメンバーや他部門と円滑にやり取りできるか。
- 問題解決能力:エラーや課題を自ら考え、解決に導けるか。
- 主体性・学習意欲:新しい技術を自発的に学ぶ姿勢があるか。
3.企業文化・働き方の適性
企業ごとの働き方や文化にフィットするかを確認することも大切です。
- リモートワーク適性:自律的に業務を進められるか。
- チームワークの価値観:協調性を重視するか、個人のスキルを重視するか。
- 企業の開発スタイルへの適応:アジャイル開発、ウォーターフォール開発など、企業のスタイルに合うか。
採用基準を策定するメリット
採用基準を策定することで、選考の精度やスピード、そして採用ブランディングにも大きな効果が得られます。ここでは、採用基準を明文化することで得られる主なメリットについて紹介します。
- 客観的なスキル評価で採用精度が向上する
- 磨かれた求人情報で求職者にアピールができる
- 効率的に採用活動を行える
この3点について詳しく解説していきます。
客観的なスキル評価で採用精度が向上する
エンジニアの採用にあたっては、特にハードスキルの評価が最も重要です。
そのため、
- プログラミング言語(例:Python, Java)
- フレームワーク(例:Rails, Django)
- ライブラリ・パッケージ(例:Selenium, TensorFlow)
- ツールの使用経験(例:Git, Docker)
- サーバー・環境(例:AWS, Azure)
など、技術的なスキルを網羅的に評価することが求められます。
採用基準を正しく運用することにより、評価のブレを抑え、より客観的な判断が可能になります。一律の客観的な評価を求職者に出せることで採用精度が向上し、採用の質が高まるでしょう。
具体的な評価手法としては、たとえばコーディングテストを実施し実務レベルの技術を確認したり、ペアプログラミングを通じてコミュニケーション力や問題解決のアプローチを見極めたりする方法があります。また、システム設計課題によって論理的思考力を評価したり、ポートフォリオを通してこれまでの開発経験やスキルの深さを可視化することも有効です。
磨かれた求人情報で求職者にアピールができる
企業が設定する採用基準は、単に応募者を選別するためだけのものではありません。磨き上げられた採用基準は、求人情報そのものの質を高め、企業の魅力を効果的に伝えるための重要なツールとなります。
たとえば、「フロントエンドでの開発経験がある方募集中」といった表現と、「フロントエンドでの3年以上の実務経験、Reactを使用した1年以上の開発経験」といった表現では、求人情報の解像度に大きな差があります。数字や具体的なツール名を含めるだけで、求職者が受け取る情報の鮮明さは格段に向上します。
このように採用基準を言語化・明文化することで、企業としての期待や価値観が求人情報に落とし込まれ、よりマッチした人材からの応募を促すことが可能になります。また、採用基準は求人票に表れるだけでなく、自社のビジョンや理念、求める人材像そのものの明文化にも繋がります。結果として、採用基準を通じて企業の魅力を伝えることができ、優秀な人材を引き寄せる強力な武器になるのです。
効率的に採用活動を行える
採用基準を策定することで、効率的に採用活動を行うことに繋がります。理由は主に以下の2点あります。
- 候補者の判断スピードが速まるから
- 採用母集団の質が上がり、自社にマッチしない人材を排除できるから
まず、明確な基準があることによって、候補者のスクリーニングや面接プロセスが迅速かつ効率的になります。採用基準が曖昧だと、客観的な判断ではなく、主観で判断することになります。主観で判断する場合、どの候補者が最適であるかの判断に時間がかかってしまいます。その結果、選考プロセスに遅延が生じるのです。よって、採用基準を明確にすることは採用の効率化につながるといえます。
また、採用母集団の質が上がるという点も挙げられます。採用基準に合致する候補者を迅速に見つけることができるため、不適切な候補者に割く時間を割くことができ、結果として採用活動の効率化に繋がります。
【事例付き】採用基準3つの作成手順
採用基準を正しく設計するには、現場の声を取り入れながら、企業の方針や求職者目線とのバランスをとる必要があります。ここでは、実際に活用できる採用基準の作成手順を紹介します。
- 現場エンジニアを中心に必須スキルを洗い出す
- 採用要件を価値観と能力に分類し、MUST/WANTを整理する
- 求職者目線で競合他社と差別化する
3ステップに分けて、採用基準の作成方法を解説していきます。
現場エンジニアを中心に必須スキルを洗い出す
現場エンジニアは、サービス開発・運用の中核を担う存在です。実務で必要とされるスキルを把握することで、採用基準がより実態に即したものになります。
そのためには、経験年数やプログラミング言語、フレームワーク、OS、インフラ環境、データベースなど、技術要素を具体的に整理することが求められます。現場のエンジニアを巻き込み、必要なスキルの洗い出しを進めましょう。
有効な手法としては、ジョブディスクリプションの作成やKSA(知識・技術・能力)分析、社員アンケート、個別インタビューなどがあります。
特に自社で活躍している人材の特徴を分析することが重要です。例えば、株式会社ミツカリでは観察やインタビュー、アンケートなどを通じて情報を収集し、KSAOという枠組みで統合分析を行っています。このようなアプローチによって、実務に即したスキル要件が明確になります。
採用要件を価値観と能力に分類し、MUST/WANTを整理する

価値観(ソフト)は個人の考え方や行動様式を示します。一方、能力(ハード)は個人の知識やスキルを示します。採用要件をソフト面とハード面に分類することで、パフォーマンス評価の軸を変えることが重要です。
二軸で評価することで社員のエンゲージメントを高め、現場でパフォーマンスを発揮する基準の作成に貢献します。
「自社の課題に対して根幹の部分で貢献できる人材か?」という評価を下すことも重要です。そこで、「絶対に満たす必要がある要件のMUST」「あると望ましい要件WANT」に分類を行う必要があります。
例えば、
MUSTの部分が欠如しているが、WANTは充実した人材がいる場合を想定します。能力が高い人材でもMUSTが欠如していることで企業適合度が低いと考えられ、求めている人材ではないと判断できます。
例えば、Googleであれば
- MUST: 高い技術スキル、問題解決能力、チームワーク
- WANT: 創造力、革新性、Googleの文化への適合性
のようになっており、文化への適合がWANTに分類されていますが
Spotifyでは、
- MUST: 技術スキル、Spotifyのコアバリューへの共感
- WANT: 音楽業界への興味、創造力
コアバリューへの共感がMUSTに分類されており、企業によって大きく異なります。
求職者目線で競合他社と差別化する
ここまでの手順を追うと基本的な求人を作成することはできます。しかし、現時点では企業側の理想の状態であり、求職者にとって魅力的な求人ではありません。応募を促進させるためには、求職者の視点を取り入れ、応募したくなる求人条件へと変更することが重要です。
例えば、自社の待遇条件を一旦、相場と同程度に設定する事があります。しかし、相場と同程度に設定したことで他の求人に自社の求人が埋もれてしまいます。したがって、求人応募数が採用基準以外の影響を受けやすく、採用の狙いが外れてしまうでしょう。
相場を参考にするだけでなく、競合他社と差別化した待遇に設定する必要があります。
企業の風土や制度のリソースなどに応じて、8つの待遇の体系があります。
成果重視型
- 成長報酬型:基本報酬を抑え、書籍購入や資格取得に応じた報酬
- 高基本報酬型:給与ベースを高め、インセンティブを抑える
- 成果報酬型:基本報酬を抑え、成果や目標達成に応じた報酬
サポート重視型
- サポート型:ライフイベントや健康増進などに柔軟な選択肢がとれる
- フレキシブルベネフィット型:福利厚生や退職金を充実させる
- 社会貢献報酬型:社会貢献活動などに報酬や支援
- ワークライフバランス重視報酬型:勤続年数で有給休暇を付与、時短勤務等も検討
- フレキシブル勤務体制型:報酬は相場程度で、働き方の選択肢が多い
待遇条件の選択肢を増やし、自社に適した報酬・福利厚生制度を構築することが重要です。自社独自の待遇で競合との差別化を図り、優秀な人材の獲得が可能になります。
株式会社ゆめみの事例では、業務量が少ない日は早めに退勤したり、私用を済ませるために1〜2時間離席したり、成果さえ出していれば働く時間は割と自由に調整できます。また、働き方に関してもリモートワークやフルフレックスが可能で、副業も許可されています。
参考:)yumemiオープンハンドブック
このように採用基準を提示することで差別化を行い、求職者目線で魅力的な求人につながると考えられます。
採用基準を設定する際の4つの過ち
採用基準を設定しているにもかかわらず、うまく人材が集まらないという企業も多いのではないでしょうか。ここでは、採用基準設計でよくある失敗を4つに分類して紹介します。
- 必須要件が明確ではない
- 開発環境に固執した条件を設けてしまう
- エンジニアに必要のないソフトスキルを求めている
- 市場相場を無視した採用基準になっている
これら4つの過ちについて順に見ていきましょう。
必須要件が明確ではない
最も多い失敗のひとつが、「必須要件が曖昧なまま採用基準を設けてしまう」ことです。この状態では、選考の軸がぶれてしまい、採用担当者の恣意的な判断が介入しやすくなります。加えて、求職者から見ても、どのようなスキルや経験が求められているのかが不明確なため、応募に対するハードルが上がってしまいます。
このような状況が続くと、結果として人材が集まらなかったり、優秀な人材を見逃したり、逆に企業の文化や要件に合わない人材を採用してしまうリスクが高まります。したがって、採用基準を設ける際には、まず自社のビジョンや理念をベースに、求める人材像を明文化し、その上で必須要件を具体的に定義することが重要です。必須要件を明確にすることが候補者を増やすことに繋がる点を意識する必要があります。
開発環境に固執した条件を設けてしまう
近年、開発環境は多様化しており、特定の環境に固執した人材は限られています。そのため、企業の開発環境に一致する経験を求めることは現実的ではありません。基本的な要件を満たしている応募者であれば、多少の環境の違いは問題ない場合が多いです。
開発環境が違う例として、使用するフレームワーク、ソースコード管理ツールの違いが挙げられます。
開発環境に関する一切の使用経験がない場合には教育コストがかかるケースもあります。しかし、実務において使用経験がある場合は、他のツールでも問題なく利用することができます。
開発環境に固執することなく、求めるスキルや経験、学習意欲などを重視することで、優秀な人材を獲得し、変化に対応できる組織を作ることが重要です。
エンジニアに必要のないソフトスキルを求めている
採用の現場では、人事担当者だけが面接に関わり、実際にエンジニアリングに必要な要件とは異なる観点で合否を判断してしまうケースがあります。たとえば、「明るいコミュニケーション力」や「人当たりの良さ」、「リーダーシップ」、「交渉力」などを重視しすぎると、本質的にエンジニア職に必要な能力の評価が置き去りにされてしまいます。
もちろん、これらのソフトスキルがあるに越したことはありませんが、重要なのは「現場でどのような場面で必要となるスキルか」を明確にしたうえで、それが本当にその職種に必要なのかを議論することです。
たとえば、開発現場においては「複雑な仕様や技術的な内容をわかりやすく伝える力」や、「チームメンバーと効果的に連携してプロジェクトを遂行する力」などが求められるケースが多くあります。このように、ソフトスキルの基準を使用場面を明確にし、検討することが、本当に必要な人物像の把握に繋がります
市場相場を無視した採用基準になっている
優秀なエンジニアを獲得したいと考える企業は多くありますが、その競争は非常に激化しています。その中で、市場相場よりも明らかに低い給与水準や福利厚生を提示していては、優秀な人材に見向きもされないのが現実です。
特にスタートアップや中小企業では、他社との比較をあまり行わずに、自社の予算ベースで要件や待遇を定めてしまうことがあります。しかし、採用市場は常に動いており、トレンドや業界ごとの相場を把握しておくことは非常に重要です。
そのため、まずは他社の求人情報や採用条件を調査し、どのようなスキルや経験がどれくらいの待遇で募集されているかを把握することが必要です。自社の事業内容や財務状況とのバランスを取りつつ、市場と乖離しない現実的な採用基準を設けることが、最終的には母集団の質や量の向上に繋がります。
この際、給与だけでなく働き方や福利厚生の柔軟性なども含めて検討することで、自社独自の魅力を打ち出しながら、優秀な人材を獲得する基盤を築くことができるでしょう。
採用基準設定に役立つ3つのフレームワーク
採用基準をより精度高く構築するには、フレームワークの活用が効果的です。ここでは、採用現場で広く活用されている3つの代表的なフレームワークを紹介します。
- Must / Want
- STARモデル
- ICEスコアリング
この3つのフレームワークの特徴と活用方法について解説していきます。
| フレームワーク | 概要 | 活用方法 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|---|
| Must / Want | 必須要件(Must)と望ましい要件(Want)を分類し、採用基準を明確化。 | 必須要件を設定し、それを満たす候補者を選定。 | 基準が明確になり、効率的に選定できる。 | 必須要件を厳しくすると候補者が減る。 |
| STARモデル | 候補者の過去の経験を状況・課題・行動・結果で評価。 | 面接でSTARの順に質問し、具体的な実績を確認。 | 客観的な評価が可能で、実務能力を把握しやすい。 | 準備された回答により、実力を見抜けない可能性。 |
| ICEスコアリング | 影響力・確信度・適応度を数値化し、定量的に評価。 | I・C・Eをスコア化し、合計値で比較。 | 数値による比較ができ、統一基準を持ちやすい。 | スコア設定次第でバランスを欠くリスクがある。 |
Must / Want
採用基準を「必須要件(Must)」と「望ましい要件(Want)」に分けるシンプルなフレームワークです。
活用方法
- Must(必須要件): 採用候補者が最低限満たすべき要件
- 例: 営業経験3年以上、基本的なPCスキル、法人営業経験 など
- Want(望ましい要件): あればより良いスキル・経験
- 例: SaaS業界での営業経験、マネジメント経験、英語力 など
このフレームワークの最大の利点は、そのシンプルさにあります。必須要件が明確になることで、採用プロセスが効率化され、基準を満たさない応募者を早い段階で除外できます。一方で、必須要件を厳しくしすぎると候補者が極端に少なくなるリスクがあります。また、望ましい要件を増やしすぎると採用ハードルが高くなり、結果として適切な人材を逃してしまう可能性もあります。
STARモデル
候補者のスキルや経験を具体的な行動ベースで評価するフレームワークです。
面接で候補者の過去の経験を確認する際に使用します。
- S(Situation / 状況): どんな状況だったか?
- T(Task / 課題): どんな課題・役割があったか?
- A(Action / 行動): どのように対処したか?
- R(Result / 結果): どのような成果を出したか?
このフレームワークを活用すると、候補者の経験を具体的に掘り下げることができ、客観的な評価が可能になります。過去の行動を分析することで、その人材の実務能力を正確に測ることができる点も大きなメリットです。しかし、候補者が適切なエピソードを持っていない場合、評価が難しくなります。また、候補者が事前に準備したストーリーを話すだけになってしまうと、実際の能力を正しく判断できなくなることもあります。
ICEスコアリング
候補者の能力を数値化し、客観的に評価するフレームワークです。
各候補者を以下の3つの基準で評価し、合計スコアを比較します。
- I(Impact / 影響力): その人材が組織に与える影響度
- C(Confidence / 確信度): 採用時の成功確率(どれだけ確実に成果を出せるか)
- E(Ease / 適応のしやすさ): 企業文化やチームへのフィット感
このフレームワークの大きな利点は、感覚的な評価を避け、定量的に候補者を比較できる点です。スコアによる評価は、採用チーム内での共通認識を持ちやすくし、意思決定をスムーズに進めるのに役立ちます。しかし、評価項目の重み付けを適切に行わないと、スコアのバランスが偏り、候補者の特性を正しく評価できなくなることがあります。また、スコアの算出方法によっては、個別の強みや特徴を見落としてしまうリスクもあります。
採用フェーズごとの基準運用方法
採用基準は作るだけでは意味がなく、各選考フェーズで適切に運用することが求められます。ここでは、書類選考から最終面接までのプロセスにおける基準の使い分け方を紹介します。
- 書類選考:基本的な要件重視
- 技術試験:実務の技術重視
- 面接:チームフィット重視
- 最終面接:総合的な最終判断
上記4つのフェーズごとに基準運用のポイントを解説します。
書類選考:基本的な要件重視
書類選考では、最低限の必須スキルや経験を有しているかを確認します。
また、志望動機などで明らかに自社の内容から外れている場合は不合格とするのが良いでしょう。
基本的に書類選考では人材のハード面の最低要件であるMUSTを重視し、満たしている人材は通過させるようにしましょう。ソフト面での違和感は次の技術試験や面接の段階で通過の判断を行うことができるため、通過人数を確保することを優先しましょう。
技術試験:実務の技術重視
技術試験はエンジニアが中心となることが重要です。募集ポジションに応じてコーディングテストやシステム設計の試験を課します。
ここでは、
- 経歴と実務スキルのギャップ
- WANTスキル
- エンジニアとしてのソフトスキルの充実度
を確認することが求められます。
ここでは、実際の現場で働くことを想定した評価が重要です。求職者が自社の現場で働く時にどの様な付加価値が出せるか、必要な業務を担うことへの評価が重視されます。この技術試験でスキルが自社で補えないほど不足していると考えられた場合はお見送りしましょう。
また、書類選考で評価できないチームフィットやコミュニケーション能力も試験を通じて評価しましょう。
面接:チームフィット重視
この面接では技術スキルの評価ではなく、チームフィット力や企業への適合性の評価が中心となります。
技術試験で評価した部分も併せて、企業カルチャーやチームとの適合性を評価し、価値観の共有を行います。
面接では基準を作成する際に決定したエンジニアに必要なソフトスキルについても質問を通じて見極めることが必要です。具体的にはSTARメソッド(状況、タスク、行動、結果)を使用した事例質問を行うことができると良いでしょう。
ソフトスキルと企業への適合性を評価することで選考の通過の判断を行います。面接官が求職者と話しやすいことやコミュニケーション能力が高いことを中心に評価することは間違いです。必ず採用基準の設定を忠実に守り、選考通過の判断を行いましょう。
最終面接:総合的な最終判断
最終面接は経営視点からの適正評価や企業理解の評価を行う段階です。また、他の応募者の選考状況も踏まえて総合的に求職者に内定の判断を行います。
特に自社が採用ブランディングを行った部分に対してどのように求職者が考えているかやオファー内容と求職者の思考性に相違がないかにも着目すべきです。
総合的な判断をおこなうため、他の候補者と比較する事が重要です。候補者のメリット・デメリットを深堀りして把握することや採用時の評価と入社後のパフォーマンスの関係等を総合的に判断することが必要になるでしょう。
未経験エンジニア採用基準設定のポイント3選
未経験人材を採用する際には、実務経験よりも将来の可能性や企業文化への適応力といったソフト面が重視されます。以下の3点を基準設計に取り入れることで、より適切な人材を見極めることが可能です。
- ポテンシャル評価を軸にする
- カルチャーフィットを明文化する
- 最低限のスキル要件は明示する
ポテンシャル評価を軸にする
未経験層の採用においては、実務経験の有無ではなく、成長するポテンシャルを見極めることが鍵となります。評価項目としては、独学での学習歴、プログラミングスクールでの課題提出状況、ポートフォリオの有無などが挙げられます。さらに、GitHubでの活動やQiita投稿など、技術に対する主体的な取り組みが見えると、成長意欲の高さが評価できます。「深く知っている」よりも「どう向き合っているか」を重視した評価軸が有効です。
カルチャーフィットを明文化する
実務経験がない未経験者にとって、組織文化との適合度は成果を出す上で極めて重要です。自社がどのような価値観を持っているか、例えば「自律性を重んじる」「チームワーク重視」などを明文化し、選考時に候補者の志向とすり合わせる必要があります。これにより、入社後の定着率向上やオンボーディングの効率化につながります。
最低限のスキル要件は明示する
「未経験=完全な初心者」というわけではありません。基礎的な技術スキルの習得は最低条件として提示することが、選考の質を担保するうえで欠かせません。例えば「HTML/CSSの基本操作ができる」「Gitでの簡単なバージョン管理が可能」といったラインを設けることで、スクリーニングがしやすくなり、教育コストの最適化にもつながります。
経験エンジニア採用基準設定のポイント3選
経験者採用では、即戦力性や業務成果の再現性が評価の中心となります。以下の3つの視点を採用基準に盛り込むことで、配属後のミスマッチを防ぎ、高いパフォーマンスが期待できる人材を確保できます。
- 実務スキルを具体的に定義する
- 開発スタイルとの親和性を評価に含める
- 成果の再現性を重視する
実務スキルを具体的に定義する
経験者のスキル評価では、表面的な技術名ではなく、具体的な業務経験に基づいたスキル定義が重要です。使用言語やフレームワークだけでなく、「何の目的で、どう使ったか」を面接前に把握できるような基準設定が求められます。例えば「Reactを使ったSPA開発経験」「AWS上でのインフラ構築・運用経験」など、業務内容に即した記述があると精度の高い選考が可能です。
開発スタイルとの親和性を評価に含める
どれほどスキルが高くても、自社の開発手法と合わない場合は成果が上がりにくくなります。たとえばアジャイルやスクラムといった手法に慣れているか、コードレビュー文化に馴染めるかといった点も重要な評価軸になります。自社の開発スタイルを明文化し、それに近い環境での経験がある人材を優先的に評価する仕組みが効果的です。
成果の再現性を重視する
実績があっても、それがたまたまの成果では意味がありません。再現性のある成功体験を持っているかを確認するために、STAR法(状況・課題・行動・結果)を用いた深掘り面接が有効です。このような手法を取り入れることで、他社での成果が自社でも再現されうるかを見極めやすくなります。属人的な成功ではなく、論理的なプロセスに基づいた成果を重視しましょう。
採用基準の改善ポイント
一度作成した採用基準も、時代や市場の変化に合わせて継続的に改善していく必要があります。ここでは、採用基準の効果測定と改善につなげるためのポイントを紹介します。
- 現場の声をフェーズ毎に収集
- 効果測定による成果の数値化
- 市場分析によるエンジニア相場のキャッチアップ
- 基準の最適化基づいた面接官トレーニング
この4つの視点から、採用基準の改善サイクルについて解説していきます。
現場の声をフェーズ毎に収集
採用フェーズごとに、現在運用している基準での困難なポイントを面接等の評価シートを元に収集することが必要です。応募数や選考段階ごとの通過率と評価シートの内容を照らし合わせ、必要な人材がはじき出されていないかを確認することが求められます。
特に、応募数が少ない、選考通過率が悪い場合には、MUSTに設定したスキルを見直す必要があります。必須の要素や条件が厳しいために、応募してくれない、選考を通過できないことが想定されるからです。
面接官が好感を抱いたポイントがあったにもかかわらず、選考を通過できなかった理由などを分析し、必要があれば改善することが求められます。
効果測定による成果の数値化
採用における情報を定量化することで客観的にレビューすることができます。
採用段階では、採用コスト、採用期間、離職率などを指標として設定し、目標達成度を測定します。また、入社後の段階では新入社員のオンボーディング状況、開発案件への貢献度、パフォーマンスなどを評価します。
これらの指標に基づいて、採用基準が成果にどのような影響を与えているかを分析し、改善点を見つけ出します。また、選考時の評価と入社後のパフォーマンスを分析することで、活躍する人材の特徴や採用基準との関連性を調査することができ、自社の採用方向性を改善するきっかけになります。
市場分析によるエンジニア相場のキャッチアップ
IT業界においてトレンドの変化は非常に激しい状態です。数年前であればビックデータの分析がトレンドでしたが、現在はその先の分野である、生成AIがトレンドとなっています。このトレンドの変化により必要な人材の質や目的も変化しています。
そのため、求人情報サイトや転職エージェントの情報などを収集し、類似職種におけるスキルや経験、給与水準などの調査が定期的に必要です。また、合わせて競合企業の求人情報や採用活動に関する情報を収集し、自社の採用基準と比較分析することが必須となるでしょう。
自社の採用基準が市場の中で競争力を保持し続けることが非常に重要です。
基準の最適化基づいた面接官トレーニング
ここまでの情報を統合し、面接官のトレーニングも行う必要があります。
特に、「WANTスキルの変更点」や「選考時の評価と入社後のパフォーマンスとの関連分析結果」、「採用現場でのフィードバック」を中心に改善する必要があります。
採用基準が正しく適用されているかの判断に際して、現場エンジニアの協力が必要です。定期的な模擬面接の実施やフィードバックドキュメントの共有による相互的なチェックが採用を活性化させるでしょう。
面接官トレーニングの目的や背景とは?実践方法や必須スキルまで徹底解説!
エンジニア採用基準についてよくある質問(FAQ)
エンジニア採用基準についてよくある質問をまとめました。
スキル基準ってどうやって決めればいい?
まずは「現場でどんな技術・タスクに取り組むか」を棚卸しし、それに必要なスキルを洗い出すのが基本です。
流行の言語やツールよりも、実務に必要な技術との整合性を重視することが大切です。
中途と新卒で採用基準は変えるべき?
はい、明確に分けるべきです。中途は実績や即戦力性を、新卒はポテンシャルや価値観の一致を重視します。
基準を分けることで、選考時の評価ブレを防ぎやすくなります。
カルチャーフィットってどう見極める?
面接時に「働き方の志向」や「チームでの役割意識」「意思決定の傾向」などを具体例をもとに聞き出すのが有効です。
特にリモート志向の強さや柔軟な学習姿勢は、企業文化との相性に大きく関わります。
採用基準は一度作ったら終わり?
継続的な見直しが必要です。
実際に採用した人材が活躍できているかを振り返り、現場の声や事業フェーズの変化をもとに、定期的にアップデートすることが理想です。
まとめ
エンジニアの採用基準について、基準の作成方法・運用方法を実際の事例を交えながらご紹介しました。
エンジニアの採用業務は、企業の技術力の向上に直結する重要な業務です。技術力の向上が企業の生産性や品質の向上に影響するため、エンジニア採用業務にお悩みの方は採用基準の見直し、作成、運用を行ってみてはいかがでしょうか?
採用が難しいと感じている方は株式会社uloqo(旧株式会社プロジェクトHRソリューションズ)お任せください!
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