企業の採用面接では、人事担当者や管理職に加えて、現場社員が面接官を務めるケースが増えています。面接は、企業が候補者のスキルや人柄を評価するだけでなく、候補者が企業の雰囲気や実際に働く人々について理解を深める場でもあります。
初めて面接官を務める人の中には、次のような疑問や不安を抱くことがあるでしょう。
・どのような心構えが必要なのか
・どんな質問をすれば良いのか
・どのように候補者を見極めれば良いのか
この記事では、面接官の役割や面接の基本的な流れ、効果的な質問例について詳しく解説します。
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面接官が果たすべき役割
面接において面接官が果たすべき役割は、大きく分けて以下の2点です。
・応募者の人柄・スキルを見極める
・応募者に自社の魅力を伝える
それぞれについて解説します。
応募者の人柄・スキルを見極める
面接官の主要な役割は、応募者を十分に理解し、採用プロセスにおいてミスマッチを回避することです。
書類選考の段階では、応募者の経歴や資格などの基本情報は把握できますが、実際の面接によって初めて見えるのはその人のパーソナリティや能力などの非言語的要素です。
応募者のパーソナリティは、行動や表情、話し方などの面接での実際のコミュニケーションに現れます。面接官はこれらを通じて候補者の特性を把握し、企業との適合度を判断する役割があります。
さらに、応募者の特性を正確に把握することで、採用ミスマッチを回避できます。採用ミスマッチは、応募者と企業側の期待や認識にズレがある状態を指し、これによって早期退職や生産性の低下などの問題が生じる可能性があります。採用にかかるコストや教育コストが無駄になるだけでなく、既存社員にも負担をかける可能性があります。
応募者に自社の魅力を伝える
面接官は、自社の魅力を応募者に伝える役割も担います。
採用面接は、面接官が応募者を評価するだけでなく、応募者が自社を評価する場でもあります。自社で働く社員と話せる貴重な機会なので、面接官は企業の代表として見られ、その印象が企業全体の印象に直結します。
多くの応募者は複数の企業に同時に応募しています。他社と比較して自社を魅力的に感じさせなければ、内定を受けても辞退される可能性があります。内定辞退を防ぐ意味でも、面接官は自社を積極的にアピールする必要があります。
面接前に準備しておくべきこと
面接前に、面接官ないし採用担当は以下のことを準備しておく必要があります。
・面接官としての心構えの理解
・採用要件の理解
・面接方法・評価基準の理解
・履歴書・エントリーシートの読み込み
・面接シナリオの確認
・面接評価シートの確認
それぞれについて解説します。
面接官としての心構えの理解
上で説明したように、面接官の役割は「応募者の人柄・スキルを見極める」ことと、「自社の魅力を伝える」ことです。
ただ闇雲に質問を投げかけ、会話をしても、応募者を見極め評価することはできません。また、自社の魅力としてどのような部分をアピールしたいのか面接官も準備をしておく必要があります。
具体的な質問内容については、「面接で使える15の質問例」をご参考ください。
採用要件の理解
優れた人材を獲得するためには、自社が求める人材(採用要件)を明確に定める必要があります。
能力やスキル、経験、価値観など、具体的なペルソナが決まっている場合には、それをよく理解してから面接に臨みましょう。
たとえば、ベンチャー企業の営業職なら、自主性を持ち、積極的に行動できる人材を求めるかもしれません。また、エンジニアの採用においては、特定のプログラミング言語での開発経験を持つ応募者を優先することもあります。
採用ペルソナを十分に理解せずに面接で評価してしまうと、採用後の適合不足につながる可能性があるため、面接前に必ず確認しましょう。
面接方法・評価基準の理解
面接前に、採用活動の流れやその評価基準を深く理解しておく必要があります。
一般的に採用面接は2-3回行われることが多いです。
一次面接は現場社員、二次面接は管理職、最終面接は役員が面接官を担当するというように、面接によって面接官が異なるケースが多いです。
その場合、それぞれの面接において、重視するべきポイントや基準は異なるでしょう。
例えば、一次面接であれは、次の選考に進む前に、最低限の人柄やコミュニケーションスキル、論理性の確認が重視されるでしょうし、二次または最終面接の場合は、候補者が自社にどう貢献してくれるのか、自社で何を成し遂げたいのかなど、より具体的な候補者の考えが問われるかもしれません。
採用活動全体の流れを理解し、自分が担当する面接がどのような意義を持っているのかを事前に確認しておく必要があります。
履歴書・エントリーシートの読み込み
面接前に、履歴書やエントリーシートなどの書類をしっかり読み込んでおきましょう。
これによって、応募者の人物像を事前に把握することができ、面接がスムーズに進行します。履歴書を読んで興味を引かれた点について質問したり、面接の冒頭で使える話題を見つけたりすることも可能です。
また、面接官は企業の代表として見られるため、面接時には誠実な態度で接することが肝要です。応募者が面接の準備をしているように、面接官も準備をして臨むことで、誠実さをアピールできます。
既に書類で把握した情報について改めて尋ねることは問題ありませんが、それを初めて知ったかのような反応をすると、「履歴書を読んでいない」という印象を与えてしまいかねません。
面接シナリオの確認
面接当日は、通常、人事部の採用担当者が進行役を務めます。
進行の流れや、面接において必ず尋ねる質問をよく確認しておきましょう。
面接は大きく、尋ねる内容が全て決まっている面接と、自由な形式で質問を尋ねる面接の2種類があります。
前者の場合には、面接官ごとに均一な質問が必要なため、詳細なガイドラインが用意されているでしょう。それをよく確認し、質問漏れの無いように徹底する必要があります。
自由形式の面接でも、時間の効率的な利用を考えるために、ある程度質問内容を考えておく必要があるでしょう。
複数の面接官が参加する場合は、各面接官が担当する質問を事前に調整しておくことも重要です。
面接評価シートの確認
採用活動においては、面接で用いる評価シートが用意されていることが多いです。
そこに示されている評価基準をよく確認しておきましょう。
評価シートを用意する目的は、面接における評価項目とその基準を明確にすることです。評価シートを参考にして面接を進めることで、面接官ごとの評価の一貫性を確保し、客観的かつ公正に応募者を評価することができます。
評価シートは採用要件に基づき作成されますが、一般に以下のような項目が置かれることが多いです。
・身だしなみ・視線等のマナー
・話し方や声の大きさ
・志望動機
・向上心
・自己PR
・主体性
・行動力
・課題発見力
・ストレス耐性
・入社意欲の高さ
・社風や企業理念との合致度
■面接評価基準については以下の記事で詳しく解説しています。
【保存版】面接の評価基準・項目の作り方|基礎・重要性から解説
優秀な応募者の見抜き方
面接官の果たすべき役割の一つは「応募者の人柄・スキルを見極める」ことです。
そのためには、以下のような点を意識しましょう。
・自社にとっての優秀な人材を明確にする
・応募者の普段の姿を引き出す
・質問の内容を深掘りする
それぞれについて詳しく解説します。
自社にとっての優秀な人材を明確にする
前提として、自社にとっての優秀な人材を明確にする必要があります。「世間一般でいう優秀さ」をそのまま自社に持ち込んでしまうと、実際の業務内容と本人の特性のミスマッチを招きかねません。
例えば、明るい性格と行動力を見込んで採用したものの、黙々とこなす事務作業が多かったため、会社として見込んだ長所を活かすことができなかった、といったケースがあります。
自社で活躍している社員がどのような活動をしているのか分析した上で、自社が考える「優秀な人材」を明確に定義しましょう。
応募者の普段の姿を引き出す
優秀な人材を見極めるうえで、応募者の本音や本当の実力を引き出す必要があります。そのためには、応募者がリラックスして話ができる心地よい環境・雰囲気を作ることが大切です。
面接官が上から目線の態度だと、応募者はなかなかリラックスできず、率直な考えを言いにくいでしょう。応募者が自然体で話すことができる雰囲気作りは、面接を行ううえで非常に重要になります。
質問の内容を深堀りする
どのような質問を投げかける場合でも、「なぜ?」「具体的には?」と話題を掘り下げるための問いかけが欠かせません。深掘りして質問することで、より詳しく求職者の人となりや考え方を知ることができます。また、質問を重ねることで、応募者の理解度や回答の整合性をチェックすることもできます。
ただし、繰り返し「なぜ?」と聞いてばかりでは、求職者に圧迫感を与えかねません。下記の例のように、あくまで話を掘り下げたり、話題を広げる目的で利用するようにしましょう。
(例)
「当社にどのようなイメージを持ちましたか?」
「なぜ、そのように思ったのですか?」
「今後、身に付けたいスキルはありますか?」
「なぜ、そのスキルを身に付けたいのですか?」
面接の実際の流れ
まずは面接の基本的な流れ、やり方を確認していきましょう。
具体的な流れは以下の通りです。
①アイスブレイク
②会社の説明
③履歴書、経歴書からの質問
④応募者からの質問
⑤事務的な確認
それぞれについて詳しく説明します。
①アイスブレイク
面接に来た応募者は緊張していることが多いです。まずは、いきなり質問を投げかけるのではなく、アイスブレイク(軽い雑談)からスタートして応募者の緊張をほぐしましょう。
当日の天気や応募者の来社方法など、面接とは直接関係のないテーマで会話してみて下さい。
②会社の説明
続いては、会社の説明です。具体的な質問に入る前に、会社の事業、今後の展望、任せたい業務内容等を簡潔に説明する時間を設けましょう。
会社説明の時間を設けることで、応募者の会社への正しい理解を促すだけでなく、「丁寧な会社」という良い印象を与えることができます。
③履歴書、経歴書からの質問
応募者を見極めるうえで、最も重要となるのがこの履歴書・経歴書を見ながらの質問です。
事前に質問する項目を整理しておき、一方的に質問するのではなく、会話のキャッチボールとなるように進めることを意識してみてください。
④応募者からの質問
一通りこちらからの質問が終わったら、応募者から質問したいことがないか聞いてみましょう。
「○○さんからは質問はございますか?」
「ご不明点や気になる点など、なんでもご質問ください」
といったように伝えてみてください。
応募者の不安や疑問をできる限り解決しておかなければ、「○○が不安だから内定を辞退しよう」といった事態にもつながりかねません。自社の志望度を高めてもらうためにも、丁寧に説明することを心がけましょう。
⑤事務的な確認
最後は事務的な確認をして終了です。内定承諾書の提出期限や入社日、最後に伝えておきたい諸連絡があれば忘れず伝えるようにしてください。
以上が理想的な面接の流れになります。
面接で使える15の質問例
実際に面接で使える質問例を、質問の目的ごとに解説していきます。
質問の目的には以下の6種類があります。
・スキル・能力を見る質問
・正確・価値観を見る質問
・カルチャーマッチを見る質問
・コミュニケーションスキルを見る質問
・ストレス耐性・問題解決力を見る質問
・志望度・入社意欲を見る質問
①スキル・能力を見る質問
応募者のスキル・能力・資格などの専門スキルが、自社ににマッチしているか見極める必要があります。自社が応募者にどのようなスキルを求めるのか明確にしておきましょう。
(例)
「どのように会社に貢献することができますか?」
②性格・価値観を見る質問
応募者の人柄や性格をチェックし、自社で活躍できるポテンシャルを持っているか見極めましょう。応募者がしっかりと自己分析できているか確認することも大切です。
(例)
「普段、周りの人からどんな人だと言われますか?」
「今までに熱中したことや、好きなことはありますか?」
③カルチャーマッチを見る質問
自社の社風や理念、考え方に合った人材でなければ、周囲との軋轢を生みやすく、短期間での離職も起こりやすくなります。応募者が会社のカルチャーに共感しているか、そしてマッチしているか見極めましょう。
(例)
「どのような環境下で働きたいですか?」
④コミュニケーションスキルを見る質問
仕事を円滑に行う上でコミュニケーション能力は必須です。応募者が周囲と良好な関係を築くことができるか見極めましょう。
(例)
「チームで業務に取り組んだ際のエピソードを教えてください。」
⑤ストレス耐性・問題解決力を見る質問
応募者がストレスを感じる時やその場合の対処法を聞くことで、その人のセルフマネジメント力を見極めるだけでなく、採用後のサポートにも役立てることができます。
(例)
「現在の職場で抱えている課題を教えてください。」
「業務中にフラストレーションを感じた経験はありますか?それはどのようなシーンで起こったことですか?」
⑥志望度・入社意欲を見る質問
会社への志望度が高いほど、入社後に向上心を持って仕事に向かい、早期成長につながることが期待できます。どの程度自社のことを理解して意欲を持っているか見極めましょう。
(例)
「具体的に弊社のどういった点に興味がありますか?」
「どのような視点で志望企業を選んでいますか?」
面接官が注意すべきこと
面接をする上で、面接官が注意すべきことは主に以下の3つです。
・自社が見られているという意識を持つ
・応募者の緊張をほぐす
・逆質問に備える
それぞれについて解説していきます。
自社が見られているという意識を持つ
面接は応募者の評価が行われる場所でありながら、同時に企業の印象が評価される貴重な時間です。
そのため、企業側の担当者はマナーや態度に気をつける必要があります。高圧的な態度を取ったり、不適切なマナーで話をしたりしてはいけません。
採用が見送られた場合でも、応募者は将来的にお客様になる可能性があることを忘れてはなりません。「面接を受けさせてもらっている」のではなく、「面接に来てもらっている」という心構えを持ち、丁寧な対応を心がけることが重要です。
応募者の緊張をほぐす
面接をしている際、応募者は緊張していることが多いです。特に、新卒採用の一次面接などは、面接慣れしていない学生も多いです。
緊張していると、本来の力を出しきれない応募者も多いので、アイスブレイクを必ず行い、和やかな雰囲気づくりを心がけましょう。
選考の場とはいえ、面接は対話の一つに過ぎません。会話をしていく中で、応募者の人柄や考え、良さを引き出すという意識を忘れないようにしましょう。
逆質問に備える
面接では、多くの企業が応募者からの質問に答える「逆質問」を受けることがあります。応募者の不安や疑問を解消し、志望度を高めるための重要な時間です。したがって、逆質問にしっかりと答えられるように準備することが重要です。
一般的に問われる逆質問の例には、次のようなものがあります:
「御社で成功している方の共通点を教えていただけますか?」
「御社の評価制度について具体的に教えていただけますか?」
「異業種からの転職者が多いとのことですが、その方々はどのような学びを経験しているのですか?」
「御社の営業部の強みと課題は何ですか?」
これらは一例ですが、応募者からは「配属部署をよく知らないと答えられない内容」を問われることがよくあります。このような場合、曖昧な回答では応募者に適当な印象を与えてしまいます。したがって、的確に答えられるように準備しておくことが重要です。
聞いてはいけない!タブーな質問例
応募者の緊張感を和らげたい、リラックスした雰囲気で面接を進めて本音を引き出したい、ということから、話しやすい身近な話題から質問を切り出すことは少なくありません。
しかし、出生地、家族状況など「本人に責任のない事項」や、愛読書、尊敬する人など「本来自由であるべきもの」にかかわる事項についての質問は避けなければならないとされています。
面接で聞いてはいけない、タブーな質問項目を具体的に見ていきましょう。
②「家族」に関する質問(職業・続柄・健康・地位・学歴・収入・資産など)
③「住宅状況」に関する質問(間取り・部屋数・住宅の種類・近隣の施設など)
④「生活環境・家庭環境」などに関する質問
⑤「思想・宗教」に関する質問
⑥「支持政党」に関する質問
⑦「尊敬する人物」に関する質問
⑧「労働組合・学生運動」など社会運動に関する質問
⑨「購読新聞・雑誌・愛読書」などに関する質問
⑩「交際・結婚・出産」に関する質問
自社の採用面接において、上記に該当するような質問が行われていないか、改めて確認してみてください。
質問によっては違法行為と認定されることもあり、何より応募者に不信感、不快感を与えかねません。また、タブーとされる質問をしてしまったことがマスコミやインターネットなどで広がると、企業の社会的信頼が失墜してしまう恐れもあります。
オンライン面接を行う際のポイント
コロナ禍以降、採用選考がオンラインで行われることが多くなっています。
オンラインで面接をする際には、以下のことに気をつけましょう。
・回線等トラブル時の対応を考える
・カメラ・マイクの位置を調節する
・リアクションは大きめにとる
回線等トラブル時の対応を考える
オンライン面接では、回線状況によって、接続が途切れてしまったり、画面や音声が乱れてしまったりすることが多々あります。
そうしたトラブル時にどのような対応をとるのかを、事前に準備しておきましょう。
具体的な対策としては、以下のようなものが考えられます:
・トラブル対応用の電話番号を伝えておく
・予備デバイスの準備を応募者に促しておく
・電話での面接も可能なように準備しておく
回線トラブルが選考結果に影響することはできる限り避けるべきです。具体的な対応を想定しておきましょう。
カメラ・マイクの位置を調節する
オンライン面接では、どうしてもお互いの表情・声などが伝わりにくいことが懸念されます。
そのため、カメラやマイクの性能、位置を事前によく確認しておきましょう。
また、
・顔がよく見えるようにライトの位置を調節する
・はっきりとした声の出せる静かな場所で面接をする
などの、環境整備も怠らないようにしましょう。
リアクションは大きめにとる
上でも述べたように、オンラインではそれぞれの表情や雰囲気が伝わりにくいため、普段よりもリアクションを大きく取ったほうが良いでしょう。
応募者の話に対する相槌やレスポンスがしっかりと伝わるように意識をしましょう。
対面と大差なく、お互いの雰囲気を読み取り合えるのが理想です。
まとめ
本記事では、面接官の役割や質問例、タブーな質問、人材の見抜き方など、面接官のやり方について幅広くご紹介しました。
優秀な人材を見極められるよう、念入りに準備をして面接官をしましょう。
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