女性の活躍推進が叫ばれる昨今、政府は「2030年までの可能な限り早期に指導的地位に占める女性の割合を30%にする」という数値目標を掲げています。しかし、本当に女性管理職を増やすことが女性の活躍推進につながるのでしょうか。
今回は、日本の女性管理職の現状、「本当に女性管理職を増やすべきか」という疑問点、企業の施策事例などを解説します。
日本における女性管理職比率の現状
2022年に帝国データバンクが、11503社を対象に行った調査によると、女性管理職比率は全体で9.4%と、2021年より0.5%上昇しており、過去最高を更新しました。「30%以上」とする企業は 9.5%で、同 0.9 ポイント上昇しました。
しかし、女性管理職が「0%(全員男性)」の企業は45.0%と半数近くにのぼります。僅かながら女性管理職比率は上昇傾向が続いているものの、女性管理職が多いと言えないのが現状のようです。
参照:)「帝国データバンク 女性登用に対する企業の意識調査」
企業規模別にみると、「小規模企業」で 12.5%となるなど、規模が小さい企業ほど女性管理職の割合は高いことが分かりました。
一方業界別にみると、『小売』『農・林・水産』『不動産』『サービス』で高く、『建設』『運輸・倉庫』『製造』などが低い傾向にあることが分かりました。
参照:)「帝国データバンク 女性登用に対する企業の意識調査」
約4割の女性は「管理職になりたくない」
2022年に株式会社学情が20 代専門転職サイト「Re就活」へのサイト来訪者209名を対象に行った調査によると、「管理職になりたいですか?」という質問に対し、「なりたくない」と回答した女性は42.1%、「なりたい」と回答した人は31.6%と、管理職を希望しない女性の方が多い結果となりました。
一方、「管理職になりたい」と回答した男性は42.2%と、女性に比べて10.6%も多いことが分かりました。
多くの女性が「管理職になりたくない」と思う理由とは?
株式会社プレジデント社が、自社メディアに登録している女性約2,000名に対して行った調査結果から、女性が管理職になることに対してネガティブな感情を抱く理由が明らかになりました。
・「プライベートがなくなりそう」
・「責任をもちたくない」
・「今の環境で満足している」
これらに共通して考えられる要因として、ワークライフバランスと業務の両立があげられます。とくに、出産や育児、介護などのライフイベントと、業務量や責任が増える管理職への昇進の両立がイメージできないことから、管理職に対してポジティブな印象を抱けないことが考えられます。
参照:)女性が管理職になりたくない本当の理由は何か | PRESIDENT WOMAN Online(プレジデント ウーマン オンライン)
本当に女性管理職の比率を増やすべき?
では、そもそも多くの女性が「管理職になりたくない」と感じているのにもかかわらず、女性管理職を増やすべきなのでしょうか。
2016年の女性活躍推進法の施行を契機に、ますます女性の活躍推進が注目を浴びています。しかし近年、女性の活躍推進=女性管理職を増やすことと捉え、当の女性社員たちが望む働き方や職場でのポジションを度外視した女性管理職登用を進める企業も少なくありません。一方でそうした企業は、家庭との両立ができる環境整備が不十分といったケースも多々あります。
つまり、女性が働きやすい環境づくりが大切であり、数値目標ありきの女性管理職増加は実質が伴っていないというわけです。目標を設定して無理に女性管理職を増やす必要はなく、家庭との両立が可能な環境ができれば、管理職になりたいと考える女性も自然と増えていくでしょう。
女性管理職に向いている人の特徴とは?
まず、女性に限らず管理職として期待される能力は、業務のマネジメントと部下のマネジメント能力です。そして女性管理職として特に期待されるのは、以下の2点です。
女性ならではの人事マネジメント能力を発揮する
女性社員は、男性の上司よりも女性の上司の方が話しかけやすく、女性社員とのコミュニケーションの円滑化が期待されています。また、女性はチームとしての仕事を重視する傾向があり、チーム全員に目を配れるような能力が期待されています。
男女の違いを理解して部下に接する
女性管理職が部下に接する際には、男性管理職よりも細やかな性差への配慮が期待されています。男女の違いを理解して、適切な仕事の振り分けとコメントを与えることができる能力が期待されています。
女性管理職増加のための企業の施策事例
女性が働きやすい環境づくりを進める企業事例をご紹介します。
株式会社メルカリ「merci box」
株式会社メルカリには、安心して働くための様々な制度が詰まった「merci box」があります。会社が大切にしているバリューの一つに「Go Bold(大胆にやろう)」というものがあり、社員の不安をできるだけ少なくし、大胆に思い切り働ける環境をより充実させていくために、「merci box」を作ったそうです。
ベンチャーでも中長期的に安心して働けるベースを作りたいという背景があり、産休・育休中の給与保障だけでなく、介護に従事する社員に対するサポートや、本人が病気や怪我などで働けなくなったときや万が一死亡した際の保障も導入しています。他にも女性向けの制度としては、「育休中も給与が100%保障」、「妊活の支援」、「病児保育費の支援」、「認可外保育園補助」などがあります。
実際、採用の競争力も上がり、働き始めてもこの制度により、社員の方々は大胆に働き続けることができています。
アサヒビール株式会社「ウェルカムバック制度」
アサヒビール株式会社には、育児や看病等の理由で退職した場合、規定条件を満たせば再雇用認定を受けられる「ウェルカムバック制度」があります。
「子どもが小さい時期は子育てに専念したい」という女性にとってありがたい制度です。その他、「世代別キャリア研修」、「キャリアデザインシート」、「ダイレクトアピール制度」など自分のキャリアを具体的にイメージしやすくなる制度もあり、6割以上の既婚女性(全女性社員の3割以上)が仕事と子育てを両立しているそうです。実際に、女性管理職の人数も10年間で5倍にまで増加しています。
大手企業でありながらも、社員一人ひとりのキャリアイメージを尊重し、それに寄り添う形でサポートしている点が魅力です。
ソウ・エクスペリエンス株式会社「子連れ出勤」
ソウ・エクスペリエンス株式会社では、子連れ出勤OK制度を設けています。
社内保育所を設けたりベビーシッターを雇ったりせず、大人が仕事をしている場所に子どもがいて社員みんなで協力して面倒を見ているそうです。この「子連れ出勤」が始まった理由は、成長期のベンチャーにとって「人材を出産や転職で失いたくなかった」というもの。社員からは、「未熟児で生まれたのですぐに保育園に預けることが心配で長めに育休を取るしかないと思っていたけど、『子連れで復帰は大歓迎』と言ってもらえたから復帰できた」という声も挙がっています。
核家族化で子育てについて学ぶ機会がないまま大人になる人が多い時代、職場に子どもがいる環境で働くことにより、「子育てをリアルにイメージできるようになった」という社員もいます。
まとめ
いかがだったでしょうか。今回は、日本の女性管理職の現状、「本当に女性管理職を増やすべきか」という疑問点、企業の施策事例などを解説しました。女性管理職を無理に増やすのではなく、女性が働きやすい環境作りを進めていきましょう。
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