こんにちは。digireka!HR編集部です。
今、多くの企業が推進を図っているデジタルトランスフォーメーション。この時代の変化に合わせた人材戦略を検討できている企業はどれ程あるでしょうか。
今回は、DX時代に欠かせない人材戦略であるリスキリングについて詳しく説明します。
リスキリングとは
リスキリングとは、職業能力の再開発、再教育を意味します。新しい職業に必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを新たに獲得する教育と定義されています。近年では企業のDX推進が注目されており、デジタル化によって生じる新たな業務や業務の大幅な変更に順応するためのスキル習得を指すことが増えています。ビジネスモデルや事業戦略が変化すれば、人材戦略も変化させる必要があり、その点に重視したものがリスキリングになります。
リスキリングとOJTの違い
社内の教育と聞くと「OJT(On-the-Job Training)」を思い浮かべる方が多いと思います。実際、リスキリングとOJTの違いは何でしょうか。OJTは、社内に今存在している仕事を通じて、やり方や流れを教育し、社員にスキルを習得してもらう手法です。「存在している業務のやり方を新しく着任した人が学ぶ」が基本形で、連続系での人材開発になります。一方DX時代に必要となるリスキリングは、「今はまだない」事業や業務のために、社員に必要なスキルを獲得してもらうのが本来の目的です。非連続系での人材開発となり、今ある業務に対して教育を行うOJTと異なっています。
OJTについて詳しくはこちら→「テレワーク下において新入社員へのOJTを成功させるには?課題とポイントを解説します!」
リスキリングが必要になった背景
リスキリングが注目されるようになった理由は、やはり企業のDX推進が叫ばれる時代になったからでしょう。昨今の新型コロナウイルスの影響で、「オンライン会議」や「テレワーク制度」の導入を推し進めた企業も多いはずです。実際の所、帝国データバンクの調査から、企業の 75.5%が新型コロナウイルスを契機にデジタル施策を推進していることが分かっています。
企業のDX推進が注目される中、高度な専門性を持ったデジタル人材の不足も注目されています。その課題を解決できる手段がリスキリングです。日本IBMおよびIBMの調査によると、AIや自動化の影響で、2022年までに世界の12の大規模経済圏における1億2,000万人の労働者は、リスキリングが必要になる可能性があります。日本においては、488万4,000人の労働者がリスキリングを行う必要があると言われています。労働者のスキルギャップを埋めるために要する教育時間は、2014年の平均3日間から2018年には36日間とわずか4年で10倍以上に増加しました。業務を遂行する上で必要とされる能力や専門知識が、年々高度になっていることが伺えます。
参照)
「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査(2020年8月)」
「IBM Japan Newsroom-ニュースリリース」
「The Enterprise Guide to Closing the Skills Gap(英文)」
リスキリングの導入事例
AT&T
アメリカでリスキリングの先駆者として知られるのが、通信事業者で あり、ワーナーメディアを傘下に抱える巨大メディア・コングロマリットでもある「AT&T」です。AT&Tは、2008年に行った社内調査から、「事業に必要なサイエンスやエンジニアリングのスキルを有する人材が従業員25万人の半数に過ぎず、約10万人は10年後には存在しないであろうハードウェアスキルしか有していない事実」を把握しました。そのようにしてリスキリングの必要性を認識し、先陣を切って実施しました。
参照:)「リクルートワークス研究所-リスキリング~デジタル時代の人材戦略」
まず2020年までに必要なスキルを特定し、現状のスキルから移行するための計画を作成しました。それが、2013年にスタートした「ワークフォース2020」です。ワークフォース2020では、2020年までに10億ドルを投下して10万人の従業員のリスキリングを実行することを目標として掲げました。社内の人材異動を円滑にする環境整備や、従業員のキャリア開発支援ツールの提供、オンラインの訓練コースの開発、従業員のためのワンストップ学習プラットフォームの提供等、様々な取り組みを実施してきました。
その結果、社内で必要な技術職の81%を充足できました。また、リスキリングに参加した従業員はその他の従業員よりも、1.1倍高い評価を受け、1.3倍多く表彰を受賞し、離職率は1.6倍低くなりました。
Microsoft
Microsoftは、コロナに伴う失業者2500万人のリスキリングを「Global Skills Initiative」で無償支援しています。2020年6月30日に発表し、傘下のLinkedIn、GitHubとともに無償でリスキリング講座を提供しています。自社ソフトMicrosoft Teams上に3社の教育コンテンツを登載し、外部の教育プログラムにも接続できます。日本でも2020 年12 月15 日より、デジタルスキルの習得支援施策「グローバル スキル イニシアチブ ジャパン 「Global Skills Initiative-Japan」を提供し、デジタル人材の育成並びに失業者の就労支援を行っています。
参照) 「マイクロソフト、COVID-19 経済下で求められる新たなデジタルスキル習得に向け 2500 万人を全世界で支援」
リスキリングの日本企業の導入事例
英語圏での注目度に比べると日本ではまだまだ知られていないリスキリング。しかし、日本企業における取り組みも増加傾向にあります。
富士通
富士通は、2020年度の経営方針にて、成長投資を加速することを発表しました。社会・お客様への提供価値の創造と富士通自身のDX企業への変革のために、5年間で5,000~6,000億円程の投資を行う予定です。その中でも、会社や社員自らの変革のための投資として、人材のリスキリングを打ち出しています。
日立製作所
参照) 「リスキリングする組織 デジタル社会を生き抜く企業と個人をつくる」
日立製作所グループは「デジタル対応力を持つ人材の強化」を重点課題の1つとしており、人材育成を総合的に担う日立アカデミーでは様々なデジタルスキル向上プログラムを開発してきました。その日立アカデミーが日立製作所と連携し、2020年度に開発・提供したのが、「デジタルリテラシーエクササイズ」という基礎教育プログラムです。DXに関するプロのスキルを身に付けるまでの工程を登山に見立てたプログラムになっています。これは、国内の日立グループの全従業員16万人が受講できるようになっており、戦略実現のための人材育成を推進しています。
大阪ガス
大阪ガスは、「データから誤った意思決定を下さない」「他者の分析結果の報告を鵜呑みにしない」ことを目標において、社員のデータ分析力を高めるための「データ分析講習」を2011年に開始しました。講師による講義だけでなく、個人での自主演習やケースを使ったグループ演習もあり、実際にその場でデータに触れる「実践」を重視したプログラムになっています。
参照) 「リスキリングする組織 デジタル社会を生き抜く企業と個人をつくる」
今後のリスキリング導入における課題
スキルの可視化
リスキリングを実行するためには、今保有しているスキルの実態とこれから必要になるであろうスキルを明確に認識することが大前提として必要です。しかし、日本企業はスキルデータベース、スキルマップの信頼が低いため、スキルの可視化にAIを活用し、様々なデータ活用を通して、職種に求められるスキルを明確にし続けるべきだと考えられています。
コンテンツ
デジタルスキルを「仕事で使えるレベル」に高められるコンテンツはどこにあるのか、という課題があります。eラーニングや座学だけでは実際に仕事で使えるスキルが身につくとは限りません。コンテンツは社内で準備する以外にも、社外の教育制度も検討すると良いでしょう。上記に示したMicrosoftのGlobal Skills Initiativeのような制度を積極的に取り入れて有効活用しましょう。
リスキリングに抵抗のある社員
どんな企業にもリスキリングに抵抗のある社員は一定数いるはずです。しかし、リスキリングを実行しなければ、企業内で「価値を生み続ける」人材として、DX時代を生き残れません。リスキリング教育のゴールに対して、どこまで進んでいるのか、社員それぞれのスキルを可視化した上で、新しい職務の可能性を見せ、社員のモチベーションを維持していくことが重要になるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回はリスキリングについて詳しく解説しました。
リスキングの実施によって、DX推進において欠かせないデジタル人材を確保できるはずです。DX戦略を検討中の企業様は、リスキリング戦略の構築にも着手してみてください。
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