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中途採用の基本知識
中途採用とは、すでに就業経験のある人材を企業が採用することです。
新卒採用以外での人材採用は、職務経歴の有無や年齢層に関わらず、すべて中途採用に当てはまります。そのため、ターゲットも幅広いですが、中途採用のターゲットとなる層は主に以下の3つに分類されます。
- 若手人材 :第二新卒(大学卒業後3年以内)、社会人経験3~5年
- 即戦力人材:社会人経験5~10年
- 管理職人材:社会人経験10年以上
新卒採用の際はポテンシャルが重視されるのに対し、中途採用では採用ニーズに合った経験やスキルを所有しているかが重視されます。中途採用はそれまでの社会経験から、即戦力を期待できる点が大きな特徴です。
しかし、卒業して就職し入社3年以内に就職活動をしている「第二新卒」と呼ばれる若手求職者に関しては、新卒とほぼ同じ目的・基準での採用が多いことから、企業によっては新卒採用に分類して採用計画を進めることもあります。
何を目的に中途採用を行うかによって、どの層をターゲットにするか変わってくるでしょう。
企業が中途採用を行う「目的」
企業が中途採用を行う主な目的には、前任者の休職・退職に伴う欠員補充や、事業拡大に伴う人員増強、即戦力の補填などが考えられます。企業にとって中途採用とは、中長期計画達成のための人材の補完・強化の大切な取り組みとなります。
そのうえで、自社には無いノウハウや知見を導入することも中途採用の重要な目的のひとつです。新卒から入社した従業員が多い企業では、どうしても他社の文化や風土を知る機会は限られてしまいます。
異なる企業で働いた経験がある人材を迎え入れることで、社内に新しい風が入り、既存の組織や従業員にとってよい刺激となる場合も多いです。
中途採用の現状
中途採用の現状を見ていきましょう。

出典:)マイナビ「中途使用状況調査2024年版(2023年実績)」
株式会社マイナビの調査によると、2023年に中途採用活動を行った企業の年間平均採用人数は、21.8人となっており、調査開始以来の過去最高を記録しています。
また、2023年の退職者数の平均人数は15.6人で、退職者数に対する採用人数の割合である欠員充足率は、139.2%となり、中途採用による欠員の充足ができていることが伺えます。
また、リクルートワークス研究所が公表した「中途採用実態調査」から、以下の結果がわかりました。
「増える」と回答した企業 22.4%
「減る」と回答した企業 4.0%
「増える」と回答した企業数は「減る」と回答した企業を大きく上回る結果となりました。また、従業員規模別に見ると、「増える」の回答率がもっとも高かったのは5000人以上の企業で、34.1%でした。
「人員を確保できた」と回答した企業 39.2%
「確保できなかった」と回答した企業 58.5%
中途採用のニーズは高まっているものの、予定採用数を満たせない企業も多いことが分かります。
これまでは、売り手市場となっている新卒採用で充足できなかった人員を中途採用で確保する企業も多くありました。
しかし、リクルートワークス研究所の調査によると、中途採用においても採用難が加速していることが予想されます。人事担当者には、より戦略的な採用活動が求められているといえるでしょう。
中途採用実態調査(2023年度上半期実績、2024年度見通し 正規社員)
新卒採用との違いは?
新卒採用とは、社会人経験のない学生を対象とした採用活動です。
〈特徴〉
- 卒業直後の4月に入社することを前提に、募集・選考
- 若手人材の確保や将来の幹部候補生の採用、大規模な増員などが目的
自社で育成していくことを前提に置くため、選考の基準としてもビジネススキルよりは人柄やポテンシャルを重視します。採用活動も中長期計画に基づいて行われ、一定以上の育成機関を見据えて取り組むことが多いです。
対して中途採用は、社会人経験のある人材として見られるため、着実な活躍ができるかどうかが重視されることが多いです。
なお、中途採用と類似した用語に「第二新卒」という言葉がありますが、こちらは新卒で入社してからおおむね「3年以内」に転職活動をしている人を指します。転職者のなかでも年齢が若いため、一般的な中途採用と比べると、将来性を期待してポテンシャルを重視されやすいのが特徴です。
第二新卒採用におすすめのスカウト媒体とは?選び方も含めてご紹介!
キャリア採用との違い
キャリア採用とは、既にスキルを持った経験者を即戦力として採用することです。
〈特徴〉
- 職務経験や知識・実績を踏まえて即戦力となる人材を採用
- 専門性の高い職種で求められることが多い
転職市場が活性化したことで以前より転職が一般的になり、企業が求める特定の職種や職務経験のある人材も転職するようになりました。スキルを持つ経験者を雇うことで、企業は育成コストを抑えながらすぐに活躍できる人材を確保できます。
そのため、おおまかな傾向としては、高い専門性が問われる業種や部門でキャリア採用が用いられるケースが多いです。
一方、中途採用は未経験者も対象とする点に大きな違いがあります。傾向としては専門性の低い職種が中途採用枠となることが多いです。ただ、人材不足に陥りやすい企業においては、専門分野であっても育成を見込んでの中途採用は十分に有力な選択肢となります。
中途採用が注目される3つの背景
従来、多くの企業では新卒者を対象とした一括採用を行ってきました。特に大企業では、新卒採用しか行わず中途採用を全く実施しない企業も少なくありませんでした。
しかし現在では、企業の規模を問わず、中途採用を人材獲得の重要戦略と位置づけている企業が増えています。その背景には何があるのでしょうか。
主に3つの背景が挙げられます。
- ビジネス環境の変化
- 労働者の就労意識の変化
- 多様性のある組織の価値
それぞれについて詳しく解説します。
ビジネス環境の変化
グローバル化に伴い、企業を取り巻く競争環境は厳しさを増しています。こうした環境下で企業が成長を続けるためには、変化への対応力、そしてスピードが不可欠です。しかし、専門性を持った人材を育成するには、どうしても時間やコストがかかります。
このような背景から、スピード感をもって変化に対応していくにあたり、社内だけではまかなえない即戦力を得るため、大企業、中小企業に関わらず、中途採用を重要な人材戦略に掲げる企業が増えているのです。
労働者の就労意識の変化
終身雇用制度が一般的だった時代から、今は転職も一般的と言われる世の中になり、労働者側にも変化が見られるようになりました。
現在では転職はネガティブなものではなく、やりがいやキャリアアップ、あるいはワーク・ライフ・バランスなど、自己実現のためのステップと捉えられています。
そのため、中途採用市場には前向きで優秀な人材が多く存在していると考えることができます。企業にとって魅力的な人材を獲得できる大きな機会になっていることも、中途採用が注目を集めている理由のひとつです。
多様性のある組織の価値
ダイバーシティが進む現代においては、多様なバックグラウンドや経験を持つ人材を組織に取り入れる姿勢も注目されてきています。
国籍や年齢、性別、障害の有無などにかかわらず多様な価値観を持つ人材を受け入れることで、企業価値の向上やイノベーションの創造につなげる経営戦略を行う企業も増えています。その際企業には、多様な人材が活躍できる環境づくりに向けた配慮を行い、受け入れの体制を整えることが求められています。
中途採用のニーズが高まっている背景には、このように多様な人材を求める経営戦略への移行も影響しているといえるでしょう。
中途採用が難しい理由
中途採用は新卒採用と比べて求められる条件がシビアになりやすく、企業側・求職者側の双方にとってハードルが高まる傾向があります。特に即戦力性やスキルマッチなど慎重な判断が必要となるため、スムーズに進まないケースも少なくありません。
以下が、中途人材の採用の難易度が高くなる要因です。
- 即戦力が求められる
- 企業と求職者のミスマッチ
それぞれについて詳しく解説します。
即戦力が求められる
中途採用では、入社後すぐに成果を出せる人材が求められます。新卒と異なり研修期間を多く確保できないケースが多く、短期間で現場にフィットしアウトプットを出せるかが採用判断の大きな基準になります。
そのため、スキル・経験・業界理解など要求水準が高まり、対象人材が限定されやすい点が難易度を上げる要因となります。
企業と求職者のミスマッチ
企業は即戦力補強・業務課題の解決を目的とした「今必要な役割」を埋めたい一方、求職者はキャリアアップや働き方改善を求めるなど優先軸が異なることが多いです。
この方向性の違いが、採用過程で齟齬を生みやすく、スキル・待遇・価値観の均衡が取れないと選考が長期化しやすいという難しさにつながります。また、情報開示が不十分だと入社後の早期離職リスクも高まります。
求職者側の負担も大きい
多くの求職者は在職中に転職活動を進めるため、業務・選考・企業研究を並行せねばならず、時間的制約が大きくのしかかります。
特に複数社を受ける場合には調整負荷が高まり、転職活動自体がストレス要因となりモチベーションが維持しにくいことも課題です。結果として応募率が下がったり、途中辞退につながるケースも発生します。
企業が中途採用の人材に求めるべきこと
中途採用では、スキルや経験を持つ人材を迎え入れることで組織の課題解決や成長を加速させることができます。
しかし、ただ経験者を採用すれば良いわけではなく、「どのような人材が組織に価値をもたらすのか」を明確にした上で見極めることが不可欠です。企業側が求めるべきポイントを整理し、採用の精度を高める視点を持つことが重要です。
- 自社課題を解決できる実務スキルと経験
- 職場文化への適応力とコミュニケーション能力
- 主体性をもって成果を出す推進力
- 長期的な成長・変化に対応できる柔軟性
以上を押さえることで、中途人材の見極め精度が高まり、入社後の活躍・定着にもつながります。
自社課題を解決できる実務スキルと経験
中途採用では、新卒と異なり短期間で成果に繋がるアウトプットを期待する傾向があります。そのため、企業は候補者がどの業務領域でどの程度のスキルを持ち、どんな成果を残してきたのかを具体的に見極める必要があります。特に前職での役割や実績は、入社後の活躍のイメージに直結します。
さらに、自社の現状課題と照らし合わせ、「どの領域で即戦力になれるか」まで明確にすることが重要です。求めるスキルを曖昧なまま採用活動を行うと、採用基準がぶれ、ミスマッチや選考の長期化につながる可能性があります。
職場文化への適応力とコミュニケーション能力
優れたスキルを持つ人材でも、社内文化や価値観と合わなければ成果を最大化できません。中途入社者は既存メンバーと協働しながら業務を推進するため、コミュニケーション能力や柔軟な立ち回りが求められます。特に現場への溶け込みが早いほど、活躍までのタイムラグを短縮できます。
また、オンボーディング期間では新しい情報が一度に多く求められるため、業務理解やキャッチアップを自走して行えるかも評価ポイントとなります。文化適応力はスキル以上に成果に影響するケースもあるため、面接では人物面・価値観のフィットを丁寧に見極める必要があります。
主体性をもって成果を出す推進力
中途採用者は業務の前提知識や環境が整っていない状態からスタートします。そのため指示待ちではなく、自ら情報を取りに行き、課題を見つけ、改善提案まで主体的に動ける姿勢が大きな強みになります。期待する役割を明確にし、その役割を果たすための行動量と意思決定力が求められます。
企業側も任せきりではなく、活躍に向けたオンボーディング体制や期待値のすり合わせが必要です。しかし、最終的には自身で成果を掴みにいく推進力が活躍に直結するため、自主性と成果志向のマインドを持つかどうかを見極めることが重要です。
長期的な成長・変化に対応できる柔軟性
ビジネス環境の変化が早い現代では、採用時点のスキルだけでは将来的な価値が保証されません。新しいツールや業務フローへの適応、役割変化への対応力は中途人材にも欠かせない要素です。過去の経験に固執しすぎると、変化への抵抗が生まれ、組織との軋轢が発生しやすくなります。
そのため企業は、候補者が新しい挑戦を前向きに捉えられるか、自ら学習を続けられる姿勢を持っているかを重視する必要があります。変化対応力は継続的な活躍を左右する鍵であり、単なる経験値の多さだけで採用判断しないことが大切です。
中途採用のメリット・デメリットは?
中途採用を実施する上でのメリットとデメリットには、それぞれどのようなものがあるか見ていきましょう。
6つのメリット
中途採用のメリットは、6つあります。
- 通年採用ができる
- 人材育成コストがかからない
- 即戦力として採用できる
- 新たなノウハウや知見を吸収できる
- 組織の活性化を目指せる
- 企業ブランディングにつながる
それぞれについて詳しく解説します。
|通年採用ができる
中途採用は、新卒採用のように入社のタイミングを特定の期間に限定されず、通年採用を行えるのがメリットです。自社の都合に応じて、年度中でも不定期に実施できるため、柔軟な人員の補充が可能です。
さらに、新卒採用のように選考から入社までの間隔が空くこともなく、選考のスケジュールも任意に調整できるため、急を要する人材確保には活用しやすいのが特徴です。
|人材育成コストがかからない
新卒採用にはポテンシャルが高い人材を獲得できるというメリットがある一方で、基本的なビジネスマナーから始まり、戦力化するまでの育成コストがかかります。一方、中途採用には既に実務経験を持っているため、育成コストが低く、即戦力として期待できるというメリットがあります。
|即戦力として採用できる
中途採用は、すでに社会人としての経験を積んだ人材を獲得することができるため、即戦力としての活躍を期待できるのもメリットのひとつです。
すでに自社で使用されている専門用語やスキルなどを身につけている人材であれば、既存の従業員にそれほど大きな負担をかけず、スムーズに業務に参画することができるでしょう。一から新人研修を行うのと比べて、大幅に育成コストを抑えられるのが強みです。
|新たなノウハウや知見を吸収できる
中途採用で獲得できる人材は自社以外のノウハウを持っています。それらの知識や技術を活用することで、自社にない視点を取り入れることができ、現在抱えている課題の克服に繋がる可能性もあります。実際に、別の業界から採用された社員は、今までにない発想を持ち、新しい発見があることも多いです。
中途社員をまったく採用しない会社は、閉鎖的な考え方が浸透してしまい、企業としての成長が滞る恐れもあります。
|組織の活性化を目指せる
中途採用で入社した従業員は、生え抜きの従業員とは異なる価値観を持っているため、組織の活性化につながりやすいのも特徴のひとつです。自社にはない考え方や視点を持っている人材が増えれば、既存の方法や慣習にとらわれず、柔軟にイノベーションを生み出す環境が自然と構築されていきます。
また、採用の枠組みが固定されやすい新卒と比べて、中途採用は国籍や年齢などにとらわれずに多様な人材を採用しやすいのも利点です。
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|企業ブランディングにつながる
企業が中途採用に力を入れることには、規模や状況によって自社のブランディングにもつながります。転職希望者のなかには、まだ企業で働いているものの、よい条件があれば環境を変えてみたいと考える潜在層も一定数います。
中途採用を精力的に行う企業は、こうした潜在層の人材を積極的に雇用している会社として前向きな印象を与えられるのです。自社の採用活動を戦略的に発信し、幅広く認知してもらうことができれば、より優秀な人材を獲得できるチャンスが広がります。
■「参考:中途・キャリア採用サイトのメリットは?掲載内容や制作事例、成功のポイントを解説 | ピタリク」
4つのデメリット
デメリットは4つあります。
- 価値観のミスマッチが起こる可能性がある
- 多数の採用には向かない
- 若手の成長を妨げる可能性がある
- 早期退職の可能性がある
それぞれについて詳しく解説します。
|価値観のミスマッチが起こる可能性がある
中途採用者は、新卒採用者と比べて前職での働き方や価値観になじんでいる場合が多いです。そのため、柔軟に自社の文化を吸収してもらいやすい新卒者とは違い、ミスマッチを起こしてしまう可能性が高い一面もあります。
特に同業種からの採用である場合、業務のやり方に相違があれば、周囲から期待される度合いに対して思ったような活躍ができないというジレンマも生じてしまうでしょう。最悪の場合は離職につながってしまう可能性もあります。
自社の情報を積極的に伝えていくことで、ミスマッチが起こらないよう注意する必要があります。
|多数の採用には向かない
対象者やシステムが明確されている新卒採用に比べて、中途採用は経験やスキルを踏まえてピンポイントで行われるのが一般的です。そのため、当然ながら大量一括採用には適していません。
また、人材紹介サービスなどを利用する場合は、1人あたりの採用コストがかかってしまうのも難点です。こうした理由から、中途採用では新卒と比べて、少数精鋭への絞り込みがとても重要となります。
|若手の成長を妨げる可能性がある
中途採用を増やしすぎると、自社の若手を登用する機会が減り、成長や昇進を遅らせてしまう側面もあるという点にも注意が必要です。自社に若い従業員が多く在籍している場合、少し上位の役職で中途採用を行うと、新たに入ってきた人材によって若手の昇進の機会が失われてしまうケースもあります。
その場合、社内の人材が育たないだけでなく、組織内での不要な摩擦が生じてしまう可能性もあるでしょう。中途採用を行う場合は、既存の人員の年齢構成やキャリアプランなども踏まえて、慎重に判断することが大切です。
|早期退職の可能性がある
中途採用の社員は前職を辞めて転職活動を行っている状態です。転職経験が多い場合、終身雇用を希望せず自分のやりたいこととの合致を主眼に置いていることが多いです。
また、新卒採用社員と比較して自社に対する愛着を持たない人が多いようです。社風や会社のビジョンではなく、条件を重視して転職を決めた社員であれば早期離職する可能性も高くなってしまうでしょう。
実際に、入社前と後の会社に対するイメージに差があれば、人間関係を構築する前に再度転職を選ぶ人も少なくありません。
中途採用の採用単価
中途採用にかかる採用単価(1人あたりの採用コスト)は、業種や職種、採用手法によって大きく異なります。企業は、いかに効率よく費用を抑えながら優秀な人材を獲得する工夫が必要となっています。
ここでは中途採用の平均的な採用単価の目安や、内訳、コストを抑えるためのポイントについて解説します。
中途採用の採用単価の目安
一般的に中途採用の採用単価は1人あたり50万円〜100万円程度と言われますが、実際には職種・採用手法・市場環境によって大きく変動します。例えば求人数が多く競合が激しいITエンジニア領域では、採用難度が高いことから紹介手数料や求人広告費が膨らみやすく、1名獲得に100万円を超えるケースもあります。
一方、営業職や事務職など応募母集団を確保しやすい職種では30万円前後に抑えられることもあるため、「どの職種をどの手法で採用するか」により採用単価の最適値は変わる点を理解することが重要です。また、入社後のオンボーディング・早期離職による再採用コストまで含めれば、見た目以上に費用がかかる場合もあります。
採用単価の内訳
採用単価には主に次のような費用が含まれます。
- 求人媒体掲載費
- 人材紹介会社への成功報酬(年収の30〜35%が相場)
- 自社採用サイトやSNS運用の費用
- 面接・選考にかかる人件費
- 内定後フォローや入社前研修の費用
採用手法によっては、媒体費が中心になる場合もあれば、人材紹介の成功報酬が大きな割合を占める場合もあります。
採用単価を抑えるためのポイント
採用単価削減の鍵は、ただコストを下げるのではなく「投資対効果の高い採用」に切り替えることです。求人票の質を高め、必要な人材に響く訴求内容に整えることで応募の質が向上し、無駄な選考工数や広告費を削減できます。また、ダイレクトリクルーティングや社員紹介制度、SNS採用など複数チャネルを組み合わせることで母集団形成の安定化も図れます。
さらに長期的な視点で言えば、自社採用サイトやコンテンツ発信による採用ブランディングを強化し、人材紹介への依存度を下げることが有効です。「自社で候補者を集められる仕組み」が構築できれば、継続的な採用コスト削減につながります。
【6ステップ】中途採用の流れ
中途採用を実施する際、戦略を立てどの順番で行うかは非常に重要な事項になります。実際の中途採用の流れはどのように進めるのか、フローごとの特徴とともにご説明します。

それぞれについて詳しく説明します。
採用計画の設定
採用計画を立てる際は、
- 採用目標の設定
- スケジュールの策定
これら2つが重要となります。
採用目標の設定
事業拡大や社員の退職により、どの部署にどんな人材が、いつまでに何人必要か、を整理します。人材を設定する際は、現場の社員からヒアリングを行うなどして具体的な人物像を洗い出し、ニーズを反映させることが重要です。
採用スケジュールの策定
中途採用は通年での実施が可能な一方、時期によって転職活動の波があるため予め把握しておく必要があります。
3月~4月:年度末で退職し、新年度から転職する傾向
6月・12月:ボーナス支給時期であることが多く、ボーナスを受け取ってから転職する傾向
9月:年度制を取る企業では9月末の上半期を終えてから転職する傾向
求職者の動きが活発な時期は求人倍率も高まるため、あえて時期を外して前倒しで採用することも可能です。
母集団形成
募集要項を作成し、求人を出して募集を開始します。募集要項に書く内容には、職務内容や給与、勤務地といった必須事項に加え「ビジョン」「企業の魅力」「入社後のキャリアパス」等を表記することも有効です。
既に職務経験のある人材を対象とした中途採用では、新卒採用に比べて職務内容や会社の雰囲気、キャリアアップの内容をより具体的に伝えることが重要となります。
中途採用の募集方法として以下が挙げられます。
〈中途採用の募集方法〉
- 転職サイト
- ハローワーク
- 自社ホームページ
- 人材派遣
- 転職フェア
- SNS
媒体によってターゲット層が異なるため、予めユーザー層のリサーチを行ったうえで利用を決めましょう。またいくつかの募集媒体を併用する場合は、媒体の特徴に合わせて原稿をアレンジすることでより募集効果を高められます。
上記のほかに、
- ダイレクトリクルーティング
- リファラル採用
などの活用も近年主流となりつつあります。
ダイレクトリクルーティングとは?最新サービス比較や費用相場も紹介!
リファラル採用とは?導入のメリットや成功のポイントを徹底解説
選考
応募者に対し、書類選考、技能審査、面接等による選考を行います。面接において押さえておきたい質問項目は以下の通りです。
〈面接で押さえておく質問〉
- 職務経歴
- 転職理由
- 志望動機
- キャリアビジョン
面接で重視するポイントとして、以下の項目が挙げられます。
- 前職でどのような成果を出したか
- 転職先に何を求めているか
- 自分の能力を自覚したうえで、どのように成長したいか
- 職場での人付き合いに支障はないか
- 自らやりがいを見つけて仕事に取り組めるか
中途採用における懸念として、自分の抱くキャリアイメージと違っていたり企業文化になじめないことによって早期退職してしまうケースが挙げられます。ミスマッチを防ぐため、面接では適切な相互理解に努める必要があります。
合否連絡・内定通知
結果を待つ応募者の心理を考慮し、できるだけ迅速に合否の連絡をします。内定通知に関しては、受諾を通知から1週間以内とすることが一般的です。
内定受諾後も定期的にコンタクトを取り、内定辞退が起こらないよう対応しましょう。特に在職中の人材の場合、内定確定後に退職交渉と引継ぎ期間が必要となるため、入社まで1、2か月ほどかかります。期間中もこまめに連絡を取ってスムーズな入社を促しましょう。
内定辞退を防止する7つの施策とは?現状や要因、対処方法まで解説!
入社手続き・入社後フォロー
労働条件通知書の作成など入社に必要な各種手続きを行います。また、中途採用の場合も一定期間は会社側からフォローを行う必要があります。
職務経験があるとはいえ、前職との細かなギャップに戸惑うなど新たな環境に適応するのには時間がかかります。仕事内容や待遇について認識のずれが判明することもあるため、定期的に面談を行ったり世話係を配置するといった対応が必要です。
内定者フォローツール13選!特徴・費用などを徹底比較
採用のフィードバック
今後の採用活動へ生かすべく、採用のフィードバックを行うことが重要です。面接内容の適切さや対応の速さ、目標の達成度について振り返り、分析を行うことで採用活動全体をブラッシュアップできます。
【例文有】面接フィードバックは必要?企業目線のメリットや具体な方法を解説
中途採用を成功させるためのポイントは?
中途採用は「難しい」とも言われていますが、以下で解説する5つのポイントをおさえて、自社の採用活動を成功へと導きましょう。

それぞれについて詳しく解説します。
採用条件や基準を明確にする
自社と応募者のミスマッチを防ぎ、優秀な人材に長く働いてもらうためには、採用条件や基準を明確にする必要があります。
中途採用の場合、欠員補充や新規プロジェクトの立ち上げが目的で実施するケースも多いと思います。採用条件や基準などが不明瞭なまま採用すると、すぐに能力を発揮できる仕事を割り振れないこともあります。
自社にとって必要な人材像を明確化し、採用基準にブレがないよう準備することで、選考をスムーズかつ的確に行えるようになります。採用条件が明確になっていれば、応募者側でも企業と自身の特性がマッチしているかを判断しやすくなるため、採用活動全体の効率が向上します。
【簡単7ステップ】採用ペルソナとは?作り方やフォーマット、活用事例も紹介!
スピーディな対応を心がける
転職活動中の人材は無収入期間が発生する可能性があるため、自身の将来への不安も感じやすくなり、なるべく早く結果が出ることを望んでいることが多いです。
また、1つの企業に絞らず、複数の企業の選考を同時進行で受けている応募者も多いでしょう。もし、対応が遅ければ競合する企業に流れてしまうかもしれません。
選考段階においてはできるだけスピーディかつこまめな対応を心がけ、人材採用の機会を逃さないようにすることが大切です。
採用プロセスを確立する
中途採用では他の企業の選考状況もあるため、迅速な選考プロセスが求められます。
対応が遅れてしまうと他社に引き抜かれてしまう恐れもあるため、スムーズで適切なプロセスを確立する必要があります。面接や評価の方法を明確化し、社内で円滑に連携できるよう体制を整えるのも重要です。
面接の評価基準・項目の作り方とは?評価方法やパターン別対策を解説!
フィードバックを収集する
自社の中途採用において、どこかのステップで課題が発生していないか、定期的に採用プロセスを振り返ることも重要です。何が上手くいっていて、どの部分に改善の余地があるかを確認し、そこに合わせた改善策を導入してアップデートしていくことで、より質の高い採用活動を目指すことができるでしょう。
同時に、求人の見直しをしておくことをおすすめします。求める人材と添わない求人になっている場合、せっかく応募して選考に進んだ人材でもミスマッチが起きてしまいます。いま一度、自社が求めるスキルや経験を適切に求人票に反映できているか確認し、必要に応じて修正していくことが大切です。
採用代行を活用する
さまざま試行錯誤してもどうしても社内で採用がうまくいかないといった場合には、プロに依頼してみるのもひとつの手です。
プロの知見を活かす代行会社に依頼することで、採用業務への取り組み方や基本的なスキルを見て学ぶことができ、採用業務全体の質も上がる可能性があります。また、細かい業務を依頼できるため、人事のリソースをコア業務に集中させることもできます。
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【3選】中途採用の成功企業事例
中途採用の成功事例について解説します。3つの業種の事例を紹介します。
| 企業 | 課題 | 施策 | 得られた成果 |
|---|---|---|---|
| 電気機器メーカー | 採用戦略の統一感がない | 広報戦略と連携し、採用サイトを統合 | 企業認知度向上・応募者の質向上・採用効率化 |
| サービス業 | 離職率が高い | 企業理念を確立し、採用コンテンツに反映 | 採用の安定化・理念共感者の増加・離職率低下 |
| 小売業 | 採用コストが高騰 | 直接応募に一本化し、採用サイトを最適化 | 採用コスト削減・応募者の質向上・採用スピード向上 |
電気機器メーカー:全社広報と採用広報の連動で採用の質を維持
総合エレクトロニクスメーカーでは、新事業の創造・推進および既存事業の改革に必要なプロフェッショナル人材を中途採用で確保することを目的としていた。採用の質を落とさず、安定的な採用を実現することが課題であった。
課題
- 新卒採用とキャリア採用で採用ページが分かれており、統一感がなかった
- 採用活動が個別に進行し、企業全体の戦略と連動していなかった
- 認知から育成までのプロセスが整理されておらず、一貫性がなかった
施策は以下の3つです。
- 採用ページを大幅にリニューアルし、「全社の広報戦略」と連携
- 「認知獲得」を重視したコンテンツを強化し、働く人の仕事内容や働き方をインタビュー形式で掲載
- サイト訪問者が求める情報にすぐアクセスできるよう、タグ検索機能を導入
得られた成果は以下の3つです。
- 企業認知度が向上(採用サイトのPV数が前年比1.5倍に増加)
- 応募者の質が向上(企業理念や仕事内容を理解した応募者が増え、面接通過率が20%向上)
- 採用プロセスが効率化(マッチ度の高い応募が増え、選考期間が短縮)
サービス業:従業員を巻き込んだ企業理念の確立で離職率低下
訪問看護ステーションを全国展開する企業では、人材確保と離職率の低下が課題となっていた。訪問看護業界は成長市場である一方、離職率が高く、安定的な採用が難しかった。
課題
- 採用した人材が企業の理念や価値観と合わず、定着率が低かった
- 業界特有の精神的な負担があり、若手人材の早期離職が発生
- 求人広告だけでは企業の魅力が伝わらず、適した人材が集まりにくかった
施策は以下の3つです。
- 従業員とともに1年間かけて企業理念を見直し、それを採用ページに反映
- 「人事制度・福利厚生」ページで精神的ケア制度を明示し、若手人材の安心感を醸成
- 企業理念に共感する応募者を増やすため、理念のストーリーを強調したコンテンツを作成
得られた成果は以下の3つです。
- 理念に共感する応募者が増加(企業の価値観に合致した人材の応募が前年比30%増加)
- 離職率が低下(特に若年層の離職率が25%減少)
- 採用活動が安定(応募者のマッチ度が向上し、面接通過率が15%向上)
小売業:応募者視点のウェブサイト構築で直接応募を促
通信販売を手掛ける企業では、キャリア採用を年間80~100名規模で安定的に実施していた。外部人材サービスの活用をやめ、公式ウェブサイト経由の直接応募に一本化したことで、採用成功を実現。
課題
- 外部人材サービスに依存し、採用コストが高騰していた
- 企業の魅力が十分に伝わらず、ターゲット層の応募が伸び悩んでいた
- 応募プロセスが不透明で、求職者が離脱しやすかった
施策は以下の3つです。
- 採用サイトを大幅に改修し、職種紹介や社員インタビューなどのコンテンツを充実
- 企業概要や求人情報を詳細に掲載し、応募者が企業のビジョンを理解しやすい構成に変更
- SNSやブログを活用し、リアルタイムでの情報発信を強化
得られた成果は以下の3つです。
- 採用コストの削減(外部サービスを廃止し、年間採用コストを30%削減)
- 応募者の質が向上(企業理解が深まり、適合度の高い応募者が前年比25%増加)
- 採用スピードが向上(直接応募が増え、選考期間が平均1週間短縮)
中途採用についてよくある質問(FAQ)
最後に、中途採用についてよくある質問をまとめました。
中途採用は何年目から?
一般的には新卒入社後1~3年程度で転職活動を始める人が多く、第二新卒として扱われることもあります。
中途採用の募集要件の作り方は?
現場のニーズを整理し、必要なスキル・経験・人物像を具体化したうえで、必須条件と歓迎条件を明確に分けて記載します。
中途採用の応募数を増やす方法は?
求人媒体の見直し、スカウトの活用、自社サイトの改善、SNS発信など複数チャネルを組み合わせることが効果的です。
中途採用の定着率を向上させる方法は?
入社前後の情報ギャップを減らし、オンボーディングやキャリア面談など早期フォローを強化することが重要です。
中途採用の場合、入社までの期間はどれくらい?
内定から入社までは1~3か月程度が一般的ですが、候補者の退職調整状況によって変動することがあります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
本記事では、中途採用について、その概要やメリットデメリット、選考フローなどをご紹介しました。
中途採用のメリット・デメリットをきちんと把握したうえで、自社の採用戦略にどのように活かしていけるのか、じっくりと検討してみましょう。
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