こんにちは。digireka!HR編集部です。昨今の3年以内離職率の上昇や少子高齢化による人材不足を解決するために、政府は人材確保等支援助成金を設定しました。これは一定の業務改善をした企業に助成金を支給するというものです。
今回は、人材確保等支援助成金の一つである「人事評価改善等助成コース」のメリット・デメリットなどを解説し、申請の手順について詳しく説明します。
人事評価改善等助成コースとは
人材確保等支援助成金の中でも、企業の生産性向上に資する人事評価や賃金制度の改善を行う企業に対して助成金を支給する制度です。
人事評価改善等助成コースには二段階のハードルが存在し、それぞれ達成するごとに助成金を受け取ることができます。
制度整備助成
これは業務改善を計画し、行った企業に対して支給する助成金です。まず人事評価制度等改善計画書を作成し、都道府県の労働局に認定を受けます。そしてその計画に基づいて人事評価制度を実際に実施することで制度整備助成は達成できます。
目標達成助成
これは業務改善計画により実際に業務が改善した企業に対して支給する助成金です。評価の主な基準は制度の継続、賃金の上昇、そして離職率の低下です。具体的には、
・人事評価制度等整備計画認定申請日から3年後の日まで制度を継続していること
・評価制度の実施直前の月とその1年後の月の賃金とを比べて2%以上増加していること
・評価時の離職率を計画時の離職率から特定の離職率ポイント分減らすこと
が挙げられます。
人事評価改善等助成コースの支給金額
助成金はそれぞれの段階の認定を受けるごとに支給されます。制度整備助成で50万円、目標達成助成で80万円の計130万円の助成金が支給されます。
人事評価改善等助成コースを申請するメリット
従業員のモチベーションアップ
複雑な基準と手順を踏まえた業務改善案により適切な評価制度が整備され、適切な人事評価が行われるようになります。また、賃金の引き上げも申請要件にあるため従業員のモチベーションの向上につながります。
企業イメージの向上
人事評価改善等助成コースは評価の基準、評価による賃金の変動幅の公開などが必要になるため企業の人事評価と賃金制度の透明性をアピールすることができます。
離職率の低下
人事評価改善等助成コースにより従業員が正当に評価されていると感じることができれば、従業員は会社への信頼が増し、離職率の低下につながります。従業員の定着促進は生産性の向上にも良い影響を与えます。
人事評価改善等助成コースを申請するデメリット
受給するまでの手順が複雑
各段階ごとに専門性の高い様々な書類を準備し、提出する必要があります。また、労働組合との合意が必要な項目もあり、人も時間も割かなければいけません。
コストがかかる
申請の要件に賃金の値上げがあるため人件費による負担が増えます。助成金が一回きりの支給であるのに対して賃金の値上げは長期的に行わなければなりません。例えば、年収400万の社員の賃金を2%挙げると8万円の負担増になります。社員が10人いて2年間賃金を払うと160万円の負担増となり、支給金の満額である130万円を超えます。そのため助成金の受給を申請の主な目的としている企業は注意が必要です。
人事評価改善等助成コースの申請手順
人事評価改善等助成コースの申請手順を詳細に説明していきます。
①業務改善の計画
人事評価や賃金の改定案、離職率を減らすための改善案を策定します。ここでは目標達成助成の要件を満たすような計画を立てなければなりません。
②必要書類の準備と認定申請
まず、人事評価制度整備計画(変更)書を作成し、提出しなければなりません。過去に計画を認定されている場合は計画書ではなく変更書という名称で提出します。
人事評価制度整備計画(変更)書には申請する事業者の情報と制度改善の情報などを記入します。具体的には、
・雇用保険適用事業者番号
・常時雇用する労働者の数
・事業所の設立年月日
・整備する人事評価制度等の概要
・整備予定日
・実施予定日
・対象となる正規労働者数の見込み
・申請予定額
・計画時離職率
・計画申請時点における平均賃金
・申請書作成担当者
などを記入します。
また、人事評価改善等助成コースの認定申請には以下のような添付書類が必要になります。
・事業所確認票
・現行の労働協約または就業規則案
・計画時離職率算定期間の雇用保険一般被保険者の離職理由等が分かる書類
・社会保険の適用事業所であることが分かる文書
・人事評価制度対象労働者の要件を満たすことが分かる書類
・その他労働局長が必要と認める書類
これらの書類と人事評価制度整備計画(変更)書を都道府県の労働局長に提出し、認定を受けます。なお、人事評価制度を整備する月の1日の半年前から1か月前の間で提出する必要があります。
③改善計画の実施
整備計画に基づく人事評価制度等を実施します。この時以下のような項目を満たすことに注意しなければなりません。
・評価の対象と基準が明確であり、労働者に開示していること
・評価を年1回以上行うこと
・評価による賃金の変動幅を明確にし、労働者に開示していること。
・労働者の賃金を2%以上増加させることについて、労働組合または労働者の過半数を代表する者と合意していること
・人事評価制度が新設もしくは改定された制度であること
④制度整備助成の支給申請
制度助成の受給申請は提出期限があり、人事評価制度に基づく賃金が最初に支払われた日の翌日から2か月以内に申請します。申請には以下の書類が必要です。
・賃金の支払い状況が確認できる書類
・整備した人事評価制度等の内容が確認できる書類
・出勤状態が確認できる書類
・生産性要件算定シート
・賃金アップ計算書
・「支給要件確認申立書」
・事業所が社会保険の適用事業所であることが分かる書類
・労働条件通知書または雇用契約書
・その他労働局長が必要とした書類
これらの書類を各都道府県の労働局長に提出します。認定された場合、50万円の助成金が事業者に支給されます。
⑤目標達成助成の申請と必要書類
目標達成助成は人事評価制度等の改善により、特定の目標を達成できたかどうかを認定します。目標達成助成の申請は、制度整備助成の認定申請日の3年後の翌日から2か月以内に行わなければなりません。
目標達成助成の支給には4つの要件を満たさなければいけません。
1.評価制度等の改善計画を実施
人事評価制度整備計画(変更)書の通りに業務制度が整備され、持続されているかを評価します。
2.生産性要件を満たしている
認定申請日の年度の前年度と3年後を比較して営業利益や生産性に6%以上の増加が見られるかどうかを評価します。生産性の計算方法は
で表します。付加価値は営業利益+人件費+減価償却費+動産・不動産賃借料+租税公課等で計算されます。なお、ここにおける人件費には役員報酬を含みません。
3.離職率の低下
所定の期間における離職率を1%低下させます。なお、対象事業所の雇用保険者数が300人以下の場合は現状維持でもかまいません。ただし、評価時の離職率が30%以下であることが前提になります。算定期間は人事評価制度等の実施日の翌日から一年が経過する日までの期間です。離職率の計算方法は
で表します。また雇用保険一般被保険者数は算定期間の初日の人数を使用します。
4.賃金の上昇
評価制度の実施直前の月とその1年後の月の対象労働者の賃金とを比べて2%以上増加させます。また、その上昇させた賃金が3年後に引き下げられていないことも条件になります。
また、申請に必要な書類は以下の通りです。
・「事業所確認票」
・所定期間の雇用保険一般被保険者の離職状況が確認することができる書類
・対象労働者への賃金支払い状況が確認できる書類
・整備した人事評価制度等が継続されているか確認できる書類
・対象労働者の出勤状況が確認できる書類
・生産性要件を満たしているか確認できる書類及び算定の根拠になる書類
・賃金アップ計算書
・「支給要件確認申立書」
・事業所が社会保険の適用事業所であることが確認できる書類
・その他管轄労働局長が必要と認める書類
これらの書類を各都道府県の労働局長に提出します。認定された場合、80万円の助成金が事業者に支給されます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。人事評価改善等助成コースは企業の人事評価改善や昇給について前向きに考えている企業にはピッタリの制度です。申請する際は受給金額にとらわれずに、長期的に制度を継続できるのか、業績改善につながるのかなどを慎重に考慮する必要があります。導入の際には社会保険労務士などの専門家に相談しながら、十分に検討しましょう。
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